両口屋是清の「千なり」、ひょうたん焼印はそのままでした
by 丸黄うりほ
ひょうたんのお菓子といえば、おそらく誰でもすぐ頭に浮かぶのが、両口屋是清の「千なり」。名古屋の銘菓ですが、京阪神のほとんどの百貨店にお店があるし、いつでも買えると思って完全に油断していました。
先日のことです。愛知県出身のヒョータニスト・杉浦こずえさんが、ちょっと不安になることをぽろりとおっしゃったのです。「両口屋是清の「千なり」も、ついにひょうたんじゃなくなっちゃったしねぇ……」
えっ?どういうこと?
そういえば、「ひょうたん日記」ではひょうたんモチーフのお菓子をいろいろ紹介しているのに、「千なり」についてはまだ書いたことがありませんでした。あまりにも有名だし、これは絶対になくならないだろうと……。
そんなわけで、一抹の不安を抱えて百貨店の和菓子コーナーに行ってみたら、大丈夫、「千なり」はありました。ほっとしたのも束の間、よくみると以前とは様子がだいぶ違っています。
新しいパッケージは大きな木と赤いコートを着た女の子の絵柄で、ちょっと洋菓子っぽい雰囲気です。ひょうたんはどこにも描かれていません。それに、以前とは違って包装が不透明なので中身は見えません(写真①)。以前の「千なり」はひょうたん柄をあしらった透明なパッケージで、中のどら焼きに押されたひょうたんの焼印が、くっきりと外からも見えていたのですが……。
お店の人に聞いてみると、「千なり」は昨年4月に23年ぶりにリニューアルしたとのこと。なんとリニューアルからずいぶんたっているのに、私はまったく気がついてなかったのです。
「パッケージは変わりましたが、ひょうたんの焼印は変わってませんよ」と、お店の人。
「中身は変わっていないんですね?よかった……。ひょうたんの焼印がかわいくて大好きなんです!」と、私は正直に告白しました。お店の人は「本当にかわいいですよねぇ」と調子を合わせてくださいました。
今回のリニューアルで、今まであった紅粒あんがなくなり、かわりに林檎あんが登場したこともわかりました。私はその林檎あんと、小豆粒あん、抹茶あんの3種類の「千なり」を1個ずつ買い求めました。
自宅へ戻ってさっそくパッケージを破ると、中から出てきたのは今までと変わらない千成ひょうたんの焼印でした(写真②)。あまりにも雰囲気が変わってしまったので、自分の目で変わってないことを確かめるまで、まだうっすら疑いの気持ちを持っていたのです。
お店の人が袋に入れてくださった栞によると、「千なり」のひょうたんは豊臣秀吉の馬印。真ん中にはちゃんと秀吉の桐紋も押されています。(写真④)
新味の林檎あんは、シャキシャキとしたりんごが入っていて、甘みの強い焼きりんごのような風味。抹茶あんは、ほんのり抹茶風味で苦味は強くありません。小豆粒あんは正統派で、安心のおいしさ。私はこれがいちばん好きですね。
それにしても。お菓子のパッケージやデザインが時代にあわせてリニューアルされるのは普通のことだと思います。いつまでもあると思っていてはいけないと、今回は強く感じました。
(925日目∞ 2月9日)