ひょうたんの穴あけ〜人体実験への道
by 丸黄うりほ
収穫してから2週間もほったらかしにしていた、千成ひょうたん「ネルウァ」の実。いつもは収穫後1週間以内には穴を開けて水浸けを開始するのですが、今年はなぜか用事が多くて忙しかったのと、100個超え……という数に手強さを感じて、ちょっとした空き時間でできるとは思えず……。
そんなこんなで作業を引き延ばしていたら、ああっ、やばい!ひょうたんの表面に白いふわふわしたカビが生えてきました。収穫した時よりも茶色くなってきた実も増えているような……。
それで、ようやく作業にとりかかることにしたのですが……。
まず用意したのは蔓を切るハサミと、穴あけドリルです。机の上にハトロン紙を敷いて作業を始めようとしたとき、「穴が大きい方がタネ出しがしやすいかな」と気がつきました。なんせ100個もありますからね。それで、去年イプの穴あけのために購入した直径2センチの太いドリルと、いつも千成ひょうたんの穴あけに使っている8ミリのドリルの2本を出してきました(写真①②)。
2センチのほうは千成ひょうたんの口部には大きすぎるので、このドリルを使うならお尻の方だなと思い、やってみたのですが……(写真③)。
か、かたい!
2センチのドリルはまったく進む気配がありません。かわりに8ミリのほうでやってみたら、なんとか開けることはできたものの、相当かたい。お尻の方に穴を開けるのは、口部に穴を開けるよりも大変だということがわかりました(写真④)。
それで、よほど蔓が可愛いくて残したいとか思わない限りは、素直に、いつものように、口部に穴を開けていくことに決めました。なんせ100個ありますから!さくさくと作業を進めねばならないのです。
しかし、今年のひょうたんはしっかりと完熟しているせいか、いつもよりかたい。ドリルがなかなか進みません。1個1分でも100分かかるなと思っていたのに、1個3分くらいかかっている。つまり300分かかる、ということは5時間?
「うわー」と思いながらしばらくやっていると、「キリだ!」と思い出しました。キリであらかじめ穴を開けておき、そこにドリルを立てると、わりとズブズブとドリルが進むのです(写真⑤)。
キリとドリルのかませ技でちょっとだけコツがつかめてきたとき、ふと手に当たったのは写真⑥のかわい子ちゃんでした。
こういう可愛い子は、穴あけの作業の手を止めてしまうので良くないのです。ひとつは、「なんという可愛い形なんだろう!」と見つめ回してしまう。そして、「どこにも穴を開けたくない!」と感じてしまう。でも、どこかに穴を開けねばタネ出しはできません。「どこに開けたらいいのか……」と悩み、結局、穴あけの順番を後回しにすることになってしまうのです。
さくさくと作業を進めるには、考え事をしていてはいけません。とにかく身体を動かさないと。
……と、脳内を白くしながらひょうたんの削りカスを見ていると、抹茶味のチョコレートを削ったみたいだなぁと思えてきました。なんだかおいしそうです(写真⑦)。
そういえば、湯浅浩史先生が、「ひょうたんの苦味は毒だけど、かけらをちょっと食べてみるくらいなら大丈夫」(花形文化通信インタビュー|植物学者 湯浅浩史 その4/5)とおっしゃっていたことを思い出し……。
かけらをお皿に乗せて、お盆に乗せて、こんなふうにしてみたら食欲をそそるかな?(写真⑧)
そんなわけで、これから食べてみようと思います。……人体実験の結果は来週お伝えしますね!
(898日目∞ 12月23日)
※次回899日目は奥田亮「でれろん暮らし」、12月26日(月)にアップ。
900日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、12月27日(火)にアップします。