「楽団あまぎつね」渡辺亮さんのひょうたん楽器
by 丸黄うりほ
先週水曜日から金曜日の「ひょうたん日記」では、世にも美しいシェケレの製作者・坂本真理さんとの出会いについて3日間にわたって書きました。
そして、私が坂本さんと出会えたのは、打楽器奏者の渡辺亮さんのおかげなのです。
12月12日、四条堀川のホテルでシェケレの作り方をざっくり教わったあと、私は坂本さんと一緒に千本中立売にあるカフェ&バー「天Q」へと向かいました。その日「天Q」で行われたのは、「楽団あまぎつね」のライブです。
「楽団あまぎつね」は、ギターの沢田穣治さんと、微分音キーボードやガジェット&ベトナムの民族楽器ダンバウの冷水ひとみさんと、渡辺亮さんの3人による即興音楽のユニットです。
「楽団あまぎつね」の音楽を言葉で紹介するのは難しいです。タイトルのついた曲はなく、毎回スタイルが変わりますし……。でも、いつも言えるのは「ここではないどこか」へ連れて行ってくれるということ。3人ともさまざまなジャンルのミュージシャンとのセッションやレコーディングに数多く参加し、世界的にも活躍されているベテラン。そんな人たちによる一回きりの即興パフォーマンスを、おうどんのおいしい食堂「天Q」で見られるというところに京都の文化力の底知れなさを感じます。
渡辺さんは、「楽団あまぎつね」でもたくさんの打楽器を演奏されるのですが、そのなかにひょうたん楽器がいくつかあります。
写真①は、たいてい毎回演奏されるビリンバウです。渡辺さんによると、こちらはパーカッショニストのゲロさんが来日時にケペル木村さんに譲り、それをさらに渡辺さんが譲り受けたのだそうです。この写真は私が9月に撮影したのですが、今回も同じ楽器を演奏されました。先日BSテレ東の番組『おんがく交差点』に出演された時も、このビリンバウを演奏されていたと思います。いわば、これは渡辺さんのひょうたん楽器の代表格。
渡辺さんはビリンバウをもう1組持ってらっしゃいます。こちらはサルバドールで原木を、ベレンでひょうたんを購入したのだとか。かなり大きなひょうたんですね。響きも大きいのでしょうか?(写真②)
そして、写真③はシェケレです。ひょうたんのまわりに付いているのはビーズではなくて、ポッド(豆のさや)。こちらは80年代にアメリカのラテンパーカッションの大手LP社がアフリカから直輸入したものらしく、もう今では売られているのを見かけないそうです。現地でももう作られてないのかもしれませんね。
そして、写真④が、12月の「楽団あまぎつね」ライブの様子。ビリンバウを演奏する渡辺さんの前に、カラフルな一双の楽器と、丸くて茶色い大きなお餅のようなものが並べてあるのが見えますか?このカラフルなほうが、カシシです。写真⑤では右手に持って振ってらっしゃるのですが、動きが速くて写真がブレブレ。すみません。
カシシは、底にひょうたんを使用したれっきとしたひょうたん楽器なんですが、見えるところは細い木の枝を編んで作られています。中にはBB弾が入っていて、ジャラジャラと面白い音がなります。このカシシは、35年前に日本で購入したそうですが、アフリカでは「ケセンケセン」と呼ばれる楽器。ちなみに、ビリンバウと一緒に振って演奏されているカシシは、岐阜市の「エスペランサ」小森喜芳さんが製作されたものだそうです(写真①②)。
そして、茶色くて丸い方が写真⑥です。なんとこれ、ユウガオの実なんだそうです。栃木県の伝統工芸品「ふくべ細工」を扱うお店「ふくべ洞」で、35年前に渡辺さんが買い求めたものだそう。丸い穴を一つ開けてあるだけなのに、じつに良い音を奏でます!これこそひょうたんそのものの音。
こんなに良い音がするのは渡辺さんだから……というのはわかっていますが、ユウガオの実、私も欲しくなってしまいました。
(895日目∞ 12月20日)