ミュージアムショップで見つけたひょうたん

by 丸黄うりほ

①京都便利堂「瓢箪に柏葉」のハガキ

②富岡鉄斎「瓢中快適図」のクリアファイル

③クリアファイルの裏面には漢詩が。なんと書いてあるのかな? 

昨日の続きです。京都国立博物館で開催中の「茶の湯」展で、青磁の「銘顔回」と、「天下六瓢箪」の筆頭ともいわれるひょうたん型の茶入「上杉瓢箪」を見た私は、帰りにミュージアムショップに立ち寄りました。

京都国立博物館のミュージアムショップは二つあって、ひとつはメインの展示場である「平成知新館」の1階にあります。展覧会の図録、絵葉書、一筆箋、クリアファイル、そのほかお香やお菓子などいろんなものが売られています。

「銘顔回」か「上杉瓢箪」のグッズがあったら買おう!と心に決めていたのですが、ありませんでした。他にもひょうたんモチーフのものは見当たらず。

もう一つのショップは博物館出口の近くにある「京都便利堂」です。こちらには、全国の美術館などでよく見かける「京都便利堂」製の絵葉書やステーショナリー、美術本などが並べられていて、本や文房具などの紙類が大好きな私はすーっと引き寄せられ、ひょうたん物件的にはあまり期待せず中へ入りました。

見ると入口の近くにワゴンが置いてあり、そこはどうやらセール品のコーナーであるようでした。半額だったか、50%オフだったか、どう書かれていたかちょっと忘れてしまったのですが、美術館や博物館のショップでセールをしているのは、あまり見かけたことがなかったので「へえ」と思い、立てかけられていた絵葉書をぱらぱら見ると……。

こ、これはひょうたんでは?

裏返すと、「瓢箪に柏葉」と書かれています。ひょうたんの部分は絵の具がぷくっと立体的にふくらんでいて凝っています。あとでネットで調べてみると、江戸時代から大正時代の染型紙をモチーフにした、「京都便利堂」のオリジナルデザインなのだそうです。これは正価でも欲しい。なのに半額とはラッキー!

さらにワゴンの中には、ひょうたんのクリアファイルまでありました。大きなひょうたんの中で、おじさんがニコニコしながら寝そべっています。「これは買うしかあるまい!」というわけで、私は他の人に先を越される前にっ!と大急ぎでその2点をレジに持って行きました。気分はバーゲンだったのですが、たぶんその場で興奮していたのは私だけ。今から思えば何もそんなに焦る必要はなかったかもしれません……。

クリアファイルに印刷されていたのは、富岡鉄斎の「瓢中快適図」でした。なんという素晴らしいタイトルなのでしょう!

裏面には漢詩が添えられています。調べてみますと、どうやらこの絵とこの詩は当時88歳だった鉄斎さん自身のことを表したもののようで、「世間から隠退し悠々自適して、自分の天性を全うする。書物を枕に、のんびり横になっているのは安楽の境地(大意)」というようなことが書かれているらしい。鉄斎さんは読書が好きだったので、ひょうたんの中で寝そべって本を読んでいるんですね。

そういえば、与謝蕪村の「又平に」の模写を富岡鉄斎が描き、その作品を六角通のおかき処「蕪村庵」が、かつて「又平餅」という商品のパッケージに使用していたことをこの「ひょうたん日記」で書いたことがありました。(836日目)

ひょうたんの中で快適に過ごす自画像を描くくらいですから、鉄斎さんはおそらくひょうたん好きだったのに違いない。私の心のなかの蛍光ペンが、この人の名前にアンダーラインを引きました。

(881日目∞ 11月30日)