山科植物資料館でひょうたん探し
by 丸黄うりほ
京都市山科区にある山科植物資料館の「秋の見学研修会」に参加してきました。
山科植物資料館は、日本新薬株式会社が1934年に回虫駆除剤「サントニン」の原植物であるミブヨモギの山科試験農場としてスタート。現在は、研究用として50年以上にわたって収集されてきた植物を系統保存し、3000種を越す世界の薬用・有用植物を栽植する施設となっています。
この施設と見学研修会についての情報をくださったのは、植物の知識がとても豊富で、かつて大原の瓢箪崩山をガイドしてくださったこともある、あるどろばんでぃ氏です(「ひょうたん日記」440日目〜443日目#瓢箪崩山)。私は、有用植物が集められているときいて、もしかしたらひょうたんも栽培されているのではないか?と思ったのです。
山科植物資料館は戦前からある施設ということで、まず建物がレトロでかわいい!特に敷地内にあるミブヨモギ記念館は、古い薬の素敵なパッケージや、貴重な生薬の標本などが展示されていて、レトロ医学モノが好きな人には大ヒットだと思います。
セミナールーム入り口のガラスケースには、ヒョウタンノキ、モダマ、ガーナ角などの実が並んでいました。ガーナ角は恐竜ヒョウタン、鬼棒などとも呼ばれる珍ひょうたんです。ちなみに、ヒョウタンノキはひょうたんに似た実がなりますが、ノウゼンカズラ科の別の植物。
見学研修会の参加者は10人ずつくらいのグループに分かれ、職員さんが1グループに一人ずつ付いて庭園内を案内してくださいました。
庭園は整然と区画が分かれていて見やすく、手入れもとても行き届いていると感じました。一般の植物園のような華やかな花壇はありませんが、大温室にはウェルウィッチア(別名:キソウテンガイ〈奇想天外〉)のとても古い株など、希少植物もたくさん。ワシントン条約の規制対象植物や環境省のレッドリスト、京都府のレッドデータブック所載植物のコーナーもあり、多くの絶滅危惧種が大切に栽培されていました。
栽植のメインは薬用・有用植物です。薬と毒は紙一重というわけで、一般に毒草とされている植物が数多く植えられていました。日本三大有毒植物であるドクウツギ、ドクゼリ、トリカブトももちろんありました。トリカブトは紫色の可憐な花が盛りを迎えていて、この植物の根を乾燥した生薬が附子(ブス)と呼ばれているとは……と思いましたよ。
ウリ科植物では、ナンバンキカラスウリの雌株を発見。真っ赤に熟した実がとても美しい!種子が痔や膿腫に用いられ、根が去痰薬になるそうです。
さらに、小さなスイカのようなコロシントウリもありました。これはアフリカ原産で、毒スイカとも呼ばれている果実です。一見おいしそうにみえるので食べてみると、強い苦味を感じ、激しい下痢を引き起こすそうです。その成分を利用して下剤としても使われているのだとか。
ウリ科植物の強い苦味といえば、ククルビタシン!そうです、ひょうたんの実にも含まれているあの毒です。コロシントウリはスイカ属で、ひょうたんはユウガオ属ですが、苦味成分は同じククルビタシン。つまり、ひょうたんも食べると毒だが、調整すれば下剤としても使えるということですよね?
山科植物資料館には、残念ながらひょうたんは植えられていませんでした。案内してくださった職員さんによると、「今年はないです。前は植えていたこともあったけど」ということでした。セミナーハウスの入り口のケースに並んでいたガーナ角は、おそらくその時に栽培されていたものでしょう。
「秋の見学研修会」が終わった後、あるどろばんでぃ氏と私は最寄駅の地下鉄椥辻(なぎつじ)駅を通り過ぎて、山科植物資料館のちょうど反対方向へと足を伸ばしました。
目的地は、この「ひょうたん日記」でも何度か紹介したことのある折上稲荷神社です(「ひょうたん日記」231日目、232日目#折上稲荷神社)。
本殿と、モルガンお雪が熱心に信仰していたことで知られる「ひょうたん大神」に手をあわせて、たのしい1日に感謝をしました。
(869日目∞ 11月11日)
※次回870日目は奥田亮「でれろん暮らし」、11月14日(月)にアップ。
871日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、11月15日(火)にアップします。