来年は全然違った形のひょうたんを育てたい気もします

by 奥田亮

4年ぶりに開催された「六斎市」のにぎわい

10月15日、16日は、小布施町で毎年恒例の「六斎市」が開かれました。「六斎市」は、町の中心を通る大通りを歩行者天国にして、町内外の農家や飲食店が露店を出す、言ってみれば収穫祭のようなお祭りで、今年はじつに4年ぶりの開催となりました。あれ?コロナ禍だとすれば3年ではないのか、と思われる方もおられると思いますが、このあたりは、2019年秋、台風19号が猛威を奮い、千曲川が氾濫。洪水による大きな被害があり、秋の行事が軒並み中止となりました。そしてその翌年の2020年からはコロナ禍、ということで、結果的に丸3年、多くの行事が中止に追いやられたのでした。まだ完全復帰ということでもなかったのですが、それでも秋の待望の祭りとあって快晴の空の下、大にぎわいでした。

さてそんな秋、何度かご登場いただいたいるTさんのところで栽培しているひょうたんが、立派に育っているとのご報告がありました(へちまも育ってるじゃないですか!?)。

Tさんから報告。百成とUFOが立派に育ち、そしてあらら、へちまも!

百成が2つとUFOが1つ。写真で見るかぎり、けっこう大きそうです。百成は2つとも首が長くてぎゅっとゆがみ、くびれが大きくて、上と下の大きさが近似した形です。うちで栽培した百成と兄弟であることは歴然としています。タネの出自が同じだとこれほどに形が似てくるということを目の当たりに見て、あらためてタネが保持する情報というのはすごいものなのだと思います。

このタネも元をたどれば、一昨年ふじっこさんからいただいたタネで、確かにその百成はくびれが大きくて上下共に大きな形をしていました。ただ、ここまで首が歪んでいなかったように思うので、この首が長い形状は、昨年こちらで栽培したときになんらかの影響で獲得された情報だと思います。栽培の状況なのか、他の苗と混じった結果なのか、どうだったのでしょう。

うちの百成(右)とTさんちの百成(左)。兄弟であることは歴然。

今年の百成。首が長くてゆがんでいる特徴は保持しながら、右3つは上が小さく下が大きな形。生育不足で皮が薄く割れてしまったものも。

ただ、今年うちで栽培した百成のうちいくつかは首の長い形状は同じでも、上が小さく下が大きな形になりました。これは、完熟しないまま成長が終わってしまったからかもしれません。タネが持つ情報を具現化できずにその形になってしまったということではないかと思います。

来年、このタネから苗を育てて栽培すると、首が長くゆがみ、上が小さく下が大きな百成になるのではないかと思います。これを繰り返していくとタネの情報は世代を超えて受け継がれながら少しずつ変化していくわけです。そしてTさんの百成は、今年またうちとは違った情報を獲得していて、そのタネを来年育てると、きっと違う形のひょうたんができるんでしょう。それが何世代か続くと、同じタネから出てきたとは思えないような違った形のひょうたんになっているんでしょうね。

う〜むなるほどと思いつつ、来年は全然違った形のひょうたんを育てたい気もします。タネバンクを作ってタネを交換するのは面白いかもしれないですね。丸黄さん、いかがでしょう。でれろん?

(851日目∞ 10月17日)

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。