なんだかんだで結局3種類のひょうたんができた
by 奥田亮
10月に入りました。町はあいかわらず新栗や果物やスイーツを求めるお客様でにぎわっております。音楽活動が3つもあった9月も、お彼岸の岩松院を最後に月末は静かに過ぎていきましたが、その間にも菜園のひょうたんは日々変化しておりました。
こぼれ種の百成ひょうたんは、最終的に6つの実が成りましたが、地這いということもあって、いずれも表面は虫食いだらけ、穴が空いたり黒い傷があったりと、あまり美しいとはいえません。そのうち2つは十分養分が行き届かないないまま枯れてしまい、ひょうたんの上半分の皮が薄くて水漬けをするとペッコリと凹んでヒビが入ってしまいました。
一番大きくしっかりできた百成は、くびれの上下がほぼ同じ大きさで口元が長くグニャリと曲がった面白い形。口から中身が出るようにしたかったのですが、キリやドリルで無理やり穴を広げようにも、この湾曲を貫通させることができません。できるところまでこじ開けて、あとは腐敗して溶け出すのを期待して水漬けしました。1週間後、中身は完全に液状化してタプタプいってるのですが、口元は閉じたまま、全く中身が出てきません。試みに虫食いの穴をキリで突いてみたら、ポコンときれいに穴が空いたので、そこから中身を振り出しました。虫食い穴も役に立つもんです。まあこれも味わいと思って、あちこちに空いた穴や傷を生かしたものを作ろうと思います。
屋根の上でのんびりしていたイプは、そのまま安定の成長を続け、ずいぶん大きくなっていました。手の届くところではないため、実際の寸法を測ることができないのですが、高さは40センチ以上はありそうです。少なくとも今うちにあるイプの中でも最大のものになるのではないかと思います。このままもうしばらく放置しておきましょう。
イプはこの1つがあればもう十分、と思っていたのですが、ある日ふと軒を見上げると、わりと大きなイプがブラブラしています。なんともう1つできていたではありませんか! 家の中からは、日除けタープに引っかかって、いかにも風情のあるシルエットになっています。くびれていないのが少々残念ではありますが。
ところが、台風で風の強かった夜が明けた朝、そのシルエットがなくなっているではないですか! あーっ、やっぱり蔓が切れて落ちてしまった! あの高さから落ちたら、割れてしまうことは必定です。心配して見に行ってみると、地面スレスレで止まっていてセーフ‼︎ 実は無傷でした。そのままの位置でバケツに乗せ、蔓を少々麻ひもで補強しました。これから先はそんなに成長しないと思いますが、もう少し熟成するまでこのまま置いておこうと思います。
そして、実はできないものと諦めていたリンゴコンテナのUFOも1つ結実しているのを発見。喜んでいたら、これも風で棚が壊れてずり落ち、コンテナの中に落ちていました。幸いにも無傷だったので、このままコンテナの中で育てることにしました。このコンテナ、このあたりを根城にしている猫が寝床にしていて、ある朝見に行くと、猫は珍客に場所を取られて迷惑そうでしたが、その後も一緒に寝ているようです。
イプとUFOはもう少し熟成させて水漬けになりますが、これで今年のひょうたん栽培も大方終了となりました。ほぼ放置していたのに、なんだかんだで結局3種類のひょうたんができたのは、なんというか意外でした。
来年は…、さあ、どうしましょうね。でれろん。
(842日目∞ 10月3日)
- 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。