インド風味の新しい音楽、そして北斎の天井画の下で演奏

by 奥田亮

なんちゃってインド音楽(撮影:以下、すべて中島俊子)

先週の月曜日(19日)は、祝日でお休みをいただきましので2週間ぶりの投稿となります。この週は2週連続で3連休、しかも小布施町は栗をはじめ、ブドウやナシなど収穫の季節到来ということで、町は果物やスイーツを求める人たちでにぎわっています。

そんなにぎわいを傍目に、この週はひょうたん音楽活動が盛んでした。まずは19日。前回お知らせしたように、スワロー亭にて「なんちゃってインド音楽」と題したライブを行いました。この日は、すぐ近くにある飲食店「響(ゆら)」さんから人気のカレー弁当を取り寄せて、カレー付きのライブ。ドリンクをどうしようかと思っていたら、いつもお世話になっているTさんが、カルダモンコーヒーを入れてくださるとのこと。インド料理に欠かせない油、ギーを滴らしてイメージだけはインドっぽさが増しました。

音楽はといえば、奥田のインド音楽についての拙い知識と、ウン十年前にシタール奏者弘雄介さんの教室に足繁く通っていたころの記憶と、その弘さんと一緒に行ったバラナシで体験したコンサートの思い出などをつぎはぎし、sui nacazimaさんがインド音楽に着想を得てプログラムしたドローンやリズムパターンとブレンド。らしいようならしくないような不思議なテイストの音楽になりました。インド音楽ではないけれど、インド風味の新しい音楽になっていたのではないかと思います。

電子音楽のsui nacazima

ダンスの鈴木彩華

ひょうたん楽器はインド楽器に着想を得た《ビビリンチョ》と《へびお》が主役となりましたが、今回はひょうたん楽器だけに限定せず、いくつか他の楽器も投入しました。一つは、これまたウン十年物置に入れたまま引っ越しの度に運んだだけでケースを開けることさえしなかった中国の揚琴(ヤンチン)。これはインドやペルシャで使われる打弦楽器サントゥールと同じルーツの楽器なので、チューニングをインド風にすれば、もうそれだけでインド感が爆上がりします。しかもサントゥールではなくて揚琴、というところが「なんちゃって」的。

もう一つは《グブグビ》。これはインドのバウルや大道芸人が使う楽器。そして、これまた大昔に購入していた廉価版のテルミン。ひょうたん楽器以外の楽器を使うのは、本当に何年ぶりでしょうか。なかなかイイもんですね。
そして、ダンサーとして参加してくれた鈴木彩華さんはインドに留学していた経験があり、南インドのカタックダンスを少し習っておられたとのこと。要所要所にインドテイストを交えながらインドの風を吹かせてくださいました。楽器を演奏していたので、間近にいながらダンスをちゃんと見ることができなかったのが残念でした。このユニットでまた何かできたら楽しそうです。

《グブグビ》を弾く奥田。ダーバンのつもりが現場のおっさんになってました。前に置いてあるのが揚琴

インド風味がにじみ出る《ビビリンチョ》

さて、私にしては怒涛の音楽月刊となったこの9月。23日にはさらにまた一つ出番がありました。114号でご紹介した謡(うたい)の周平さんからのオファーで、小布施の古刹「岩松院」で演奏させていただくことになったのでした。岩松院といえば、葛飾北斎が描いたといわれる鳳凰の天井画で全国的に有名なお寺。23日は彼岸の中日ということで、檀家さんの集いがあり、そこで演奏してほしいというご依頼です。舞台は本堂の御本尊の前、つまり北斎の天井画の真下です。観客はお寺の檀家さん。お彼岸の法要の後の奉納という位置づけでしょうか。

いや〜さすがにこれは緊張しました。皆さん、揃って黒い服で正装して神妙に聞いておられます。謡はいいとして、ひょうたん楽器、手製のひょうたん楽器ですよ! しかも使ったのは大長の寸胴《ビビリンチョ》と大ひょうたんにタンバリンを貼り付けた《べんべん》。おふざけは許されない空気のなか、ひょうたん楽器を抱えて神妙な顔で御本尊の前に正座。客観的に想像するとその状況がおかしくて笑いそうになるのをぐっと切り替えて、さも当然のようにベンベンッ!と音を出しました。

一度音が出てしまえば、あとは周平さんの鍛え上げられた謡の音声に助けられて、なんとか音楽に集中。見上げれば北斎の八方睨みの鳳凰が見えるはずだったのですが、そんな余裕は全くありませんでした。長いような短いような約15分。二人ともへんな汗をかいていました。

残念ながらこの演奏については写真も記録もありません。でも北斎の天井画の下で演奏するなんて機会は滅多にないことは確かです。冥途の土産に心の中にしまっておきましょう。でれろん。

(837日目∞ 9月26日)