「蕪村庵」のひょうたんなお菓子
by 丸黄うりほ
9月7日の「ひょうたん日記」で、与謝蕪村の俳画に描かれた『傾城反魂香』の主人公、又平さんのことを書きました。それを読んでくださったヒョータニストで歌舞伎好きでもあるKFさんが、その日のSNSに「明日、松竹座で『傾城反魂香』を観ますよ」とSNSに書き込んでくださったのです。大阪松竹座でちょうど『傾城反魂香』がかかっていたとは!なんというタイミングの良さ!
又平さんの喜びの舞のシーンで、ひょうたんが出てくるかどうか?KFさんは注意して見てくださったそうなのですが、残念ながら「出てこなかった」とのこと。このシーンについての歌舞伎の解釈と、与謝蕪村の解釈は違うのかな。もしかしたら歌舞伎の演出が時代を経て変化していったのかもしれません。
その後も又平さんについてネットで調べていたら、京都の六角通に本店があるおかき処「蕪村庵」に、「又平餅」という商品があることを発見しました。
そのパッケージには確かに又平さんが、そして足元にはひょうたんが見えます。……が、よーく見ると、逸翁美術館で見た又平さんとはお顔がちょっと違う。ひょうたんの形も違います。「又平餅」のひょうたんは、くしゃっとした曲がり瓢。どうやら、この絵は明治時代の画家である富岡鉄斎が模写したものだということがわかりました。
いずれにしても、これは重要なひょうたん物件だ!と感じた私は、「蕪村庵」本店へ直行しました。「蕪村庵」はあちこちに店舗があるようですが、本店なら全商品が揃っているだろうと思ったのです。
ところが、店頭に「又平餅」はありませんでした。お店の人に尋ねると、なんと製造中止になってしまったとのこと……!
ががーん!これは大ショックです!
しかし……
店内を眺め回すと、私のひょうたんアイが「ピーピーピー!」と反応しました。蕪村の句「中々に ひとりあればぞ 月を友」に、紅葉と月の絵をあしらった〈蕪村あられ春秋〝秋の月〟〉にひょうたんが描かれているのを発見したのです(写真②③)。お店の人曰く、「これは秋の限定商品なんですよー」とのこと。これは、買い求めるしかあるまい!
さらに、「蕪村 五・七・五」という吹き寄せあられの缶にもひょうたん発見!プレゼント用の紙袋もついていて、どちらにもひょうたんがいます(写真④⑤)。青みをおびた白っぽくなった成ひょうたんと、まだ黄緑色のふくらみかけのひょうたん。これは定番商品とのことでしたが、めちゃくちゃ可愛い!これも買い求めるしかあるまい!
……ということで、私はどうもひょうたんを見ると財布の紐が伸びきってしまうようです。
又平さんには出会えなかったけど、ひょうたんに出会えたからまあいいかー。と思いつつ、お店でもらった商品カタログを電車の中で見ていたら、富岡鉄斎による「花見又平図」が掲載されていました。
また、他にひょうたん型をした「カレーせんべい」なる商品もあることが判明。次に来た時はこれも買わなくちゃ!
(836日目∞ 9月22日)
※9月23日(金・祝)の「ひょうたん日記」はおやすみです。次回837日目は奥田亮「でれろん暮らし」、9月26日(月)にアップ。
838日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、9月27日(火)にアップします。