又平さんの足元にひょうたん

by 丸黄うりほ

①逸翁美術館ミュージアムショップで見つけた絵葉書とボールペン

②赤い頭巾の人物の足元に、ひょうたんが!

③小林一三記念館にも立ち寄りました

 昨日の続きです。逸翁美術館で展覧会「ひゅう どろどろ 怪奇まつり 歌舞伎に出てくるオバケだぞ〜」を見た後、私はミュージアムショップに立ち寄りました。そこで、またまた素敵なひょうたんとの出会いがあったのです!

写真①の絵葉書をご覧ください!赤い頭巾を被ってにこにこと微笑み、着物が肩からずり落ちているのもかまわず、陽気な足取りの男。その足元にはひょうたんがころがっています!

絵葉書をひっくり返すと、「「又平に」句自画賛、与謝蕪村筆、逸翁美術館蔵」とありました。さらに、同じ絵柄のボールペンも発見。ボールペンにも、ちゃんとかわいいひょうたんがいます!(写真②)

又平とは誰なのでしょう?この陽気な雰囲気はなんなのでしょう?

美術館でもらった『阪急文化』という冊子を見たら、現在の展示の前には与謝蕪村が特集展示されていたこともわかりました。どうやら、阪急の創始者である小林一三(逸翁)さんは蕪村にかなり傾倒していたようです。ということは、近くにある小林一三記念館に行けば、もしかしたらもっとたくさんの関連グッズ、もしかしたらひょうたんも見つかるかも?

……そう思って見学に行ったんですが、残念ながらひょうたん物件は見つかりませんでした。大変なお屋敷で、茶室がいくつもあり、茶の湯がものすごく好きな人だったのだなぁということはわかったのですが(写真③)。

そこで、私は自宅に戻ってから又平さんについてネットで調べてみることにしました。

まず、達筆すぎて読めない文字はなんと書いてあるのかというと……

左の句は「又平に 遭うや御室の 花盛り」。
そして、右の文は「みやこの花のちりぬるハ光信が胡紛の剥落したるさまなれ」と書かれているのだそうです。

又平さんは、近松門左衛門の浄瑠璃・歌舞伎の「傾城反魂香」の登場人物。実在の人物である浮世絵師の岩佐又兵衛がモデルだといわれ、腕がよくて人がいいのに吃音があって、なかなか出世のできないキャラクターとして設定されています。

この絵では、その又平さんが京都の御室で花見をしています。ひょうたんにはお酒が入っており、師匠の土佐光信から免許皆伝をようやく許されて、又平さんの足取りは軽やか。今までの努力がやっと報われて、「やったー!」と喜んでいるところ。そんなハッピーな絵だったのです。

物語を知ってからもう一度この絵を見ると、ますます又平さんが可愛らしく思えてきます。そして、やはり足元のひょうたんは幸せの象徴、ラッキーサインだったのですね!

俳画を描いた蕪村は、現在の大阪市都島区毛馬の生まれで、池田市あたりに住む師匠に絵を習いにきていたこともあったのだとか。そんな蕪村ゆかりの土地に、蕪村好きの逸翁さんは居を構えることにしたのだそうです。

(826日目∞ 9月7日)