美術館でひょうたんに会いました

by 丸黄うりほ

①北辻良央の彫刻「旅人と水守」

②北辻良央の作品「午睡」

③右のキャンバスに描かれた人物は、本物の珊瑚の指輪をしています

④そして、左のキャンバスに描かれた本の上に……

⑤ひょうたんが!

⑥この蔓も葉も、ひょうたんの葉に似ていますね……

兵庫県立美術館で開催中の『関西の80年代』に行ってきました。

この展覧会は6月18日から始まっていて、「そのうちに行きたいな」とゆっくり構えていたら、行ってきたという「花形文化通信」の塚村編集長から「ひょうたんいました」というメールが届いたのです。えっ?これは急いで行かねば!

『関西の80年代』は、バブル景気とポストモダニズムに湧き上がり、活きのいい若手が「関西ニューウェーブ」として注目を集めていた1980年代の関西のアートシーンを特集した展覧会です。

全体的にエネルギッシュでパワフルで陽気。楽しい。絵画も彫刻も色づかいが派手め。作品サイズも大きめ。「私たちは関西から世界に進出するのだっ!」という、健全な自信と野心を感じる作品が並んでいました。

そんな中で……。

ひょうたんがいたのは、北辻良央さんの作品の中でした。

写真①をご覧ください。賑やかで派手な作品が目立つ中で、北辻さんの作品はとても静かな佇まいでした。「旅人と水守」と題されたこの彫刻作品が、その静謐な雰囲気をよく伝えています。

「旅人と水守」の奥の壁に、ひょうたんは、ひっそりと、まるで息をひそめるかのように棲息していました。

写真②が、その作品「午睡」です。4号か5号くらいの小さなキャンバスを二つ並べた小品で、色づかいも淡くて繊細。どういうわけなのか、会場でもらった作品カタログにもタイトルが記されていません。

並べられたキャンバスのうち右側の、薄い水色で描かれた人物は、珊瑚の指輪をはめています。近づいてみると、指輪はどうやら本物のようです(写真③)。

そして、左側のキャンバスの真ん中に描かれた本の上に……。

それは2センチほどの、小さなひょうたんでした。どうやら真鍮でできているようです。ひょうたんの口部には細い紐が結ばれています。

とても不思議な絵でした。タイトルが「午睡」なので、右の人物が昼寝をしているのだろうということはわかります。ということは、左の絵はその人の見ている夢の世界でしょうか。真ん中の本を読みかけて眠ってしまったのでしょうか。本の人物は誰なのでしょう。本の作者でしょうか。だとしたら、このひょうたんはどういう意味なのだろう……。

私は、かなり長時間、作品の前に立って考えていました……。撮影OKな展覧会だったので、写真も撮らせていただきました。会場を出て、家路についてからも考え続けました。

そして、ネットで作者の北辻良央さんについても少し調べてみたのですが、情報がうまく探せずつかみどころがありません。そこで、展覧会のことを教えてくださった塚村編集長に電話してきいてみることにしました。

塚村編集長は、北辻良央さんの弟の北辻稔さんとお知り合いだそうで、稔さんは「きょうのコマまわし」にも登場されたことがあるのです。しかも稔さんは「ウリを栽培されている!」のだとか。しかし、編集長も良央さんについてはよく知らないのだということでした。

北辻良央さんの作品は、「午睡」に限らず、どれも後からじわじわくるなと思います。そういえば、「旅人と水守」の蔓植物の葉もハート型をしていて、ウリ科植物のようにも見えなくもないし……。すると、人物像がひょうたんの実のようにも見えてきます……(写真⑥)。いや、それはいくらなんでもこじつけでしょうか?

兵庫県立美術館『関西の80年代』、展覧会は8月21日(日)まで開催されています。みなさんも、ぜひひょうたんを探してみてください。詳しくは美術館公式サイトへ

(804日目∞ 8月5日)

※次回805日目は奥田亮「でれろん暮らし」、8月8日(月)にアップ。

806日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、8月9日(火)にアップします。