市村明久先生とひょうたん

by 奥田亮

先生所蔵のひょうたん飛鳥美人。右は擦り漆が施してありますね。品がありますね。

「しんきんギャラリー」に展示した市村明久先生の作品。

市村明久先生の篆刻作品。

ギャラリーに展示したひょうたん。

6月に入りました。図書館のひょうたんの様子はしばらく見に行けていないのですが、館長さんに聞くと順調に大きくなっているとのこと。もう少しすればきっと毎日数センチつるが伸びるようになると思います。我が家の苗はなめくじに双葉がやられてしまい、ダメかなと思っていたのですが、双葉がなくても本葉がかんばって大きくなろうとしています。そして苗よりも元気なのがこぼれ種の一群で、先週発芽10個とお知らせしてからさらに増えて現在13個が水場の周りで元気に育っています。さてどうなることでしょう。

さて、展示企画のお手伝いをさせていただいている、長野信用金庫の「しんきんギャラリー」で、市村明久先生という書家の展示が始まりました。先生は、高校教員の傍ら、終生市井の書家として生きられた方で、その作品は、町の至る所で見ることができます。初めて小布施町に来た時から、町のあちらこちらに隷書のような篆書のような凛とした風格のある文字を見かけて不思議に思っていたのですが、その多くが明久先生の手によるものでした。

明久先生は個展のようなことはされなかったようですが、お店の看板、個人宅の表札、神社のお賽銭箱、お寺の襖絵、木彫りの扁額などなど、頼まれれば無償で書いてくださったとのこと。記録を取っている訳でもなく、どこに何を書いたのか、ご本人の記憶しか頼るものがありません。なんとか作品の情報を集められないかと奮起されたのが、数年前小布施町に移住してきた姪っ子さん。先生ご本人からの聞き取りや、昔の新聞記事などから多くの作品が明らかになりつつありました。その成果はインスタグラムで見ることができます。素晴らしい書をぜひご堪能ください。

今回の展示は、作品に関する情報を集め、ゆくゆくは作品集を作るという目標のため、ということもあって企画したのですが、残念ながらご本人は今年の3月に85歳で逝去されました。私も一度お会いしたいと願っていたのですが叶わぬこととなってしまいました。期せずして遺作展になってしまった今回の展示には、いくつかの作品の写真と篆刻、そして筆や硯などの道具が並んでいます。私も篆刻の真似事をさせていただいているので、篆刻の石と印影を拝見した時は、おおおーっとテンションが上がりました。

さて、本題はこれからです。展示物の搬入をお手伝いしている時に姪っ子さんから「じつは、こんなものもあって一緒に展示しようと思うんです」と示されたのが、見目麗しきひょうたん。「おお、これは飛鳥美人」。私のテンションはさらに爆上がりです。聞けばなんと明久先生は、無類の瓢箪好きだったらしく、お宅にはまだまだたくさんのひょうたんがぶら下がっているとのこと!

そして、なんと、姪っ子さんと先生のお宅に同行させていただくことができました。この続きはまた来週! ああ瓢縁奇縁、でれろん。

(761日目∞ 6月6日)

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。