西新の夜はふけて。「串揚げひょうたん」

by 丸黄うりほ

①「串揚げひょうたん」は西新の路地奥にありました

②ひょうたんが迎えてくれました

③お店のなかにもひょうたんが!

④あちこちに!

⑤こんな巨大なひょうたんも!

⑥この串揚げもひょうたん……?

⑦おしゃれな串揚げコースでした。ごちそうさま!

 今回の福岡旅行の前に、私は「福岡 ひょうたん」でネット検索をしました。すると上位に「ひょうたん寿司」と「串揚げひょうたん」という2つの飲食店がヒットしました。中野由紀昌さんによると、「ひょうたん寿司」は天神にあるとても有名な、行列ができる店。「串揚げひょうたん」は西新にあり、中野さんも行ったことがないとのことでした。私たちはウェブサイトを見て相談し、「良さそうなお店ですね。行ってみましょう!」ということに。

お店には中野さんが予約を入れてくださり、ご自身の友人のなかでも「ひょうたん的な人々」3人に声をかけて5人で会食をする段取りまでしてくださっていました。瓢狂いの中野さんや私はまあともかくとして、「ひょうたん的な人々」とはどういう人たちなのでしょうか?

「串揚げひょうたん」は、かなり狭い路地奥に見つかりました。まさに「隠れ家」ということばが似合うたたずまいです。

その入り口に掲げられた看板のロゴの、「串揚げ」の「串」という漢字が、ひょうたんにちょっと似てるなと思いました。まあ、「串」の字に関しては、このお店のロゴに限らずまさに象形文字で、漢字のこういうところが私はとても好きなんですけど(写真①)。「いらっしゃいませ」と書いたひょうたん型の札も下がっていて、私たちを歓迎してくれているようです(写真②)。

建物は木造で、古い民家をリノベーションしたような感じ。なかに入ると、大小、形もさまざまなひょうたんがあちこちに飾られています! (写真③④)なかには店員さんの胸のあたりまであるような大きな長ひょうたんもありました!(写真⑤)

お店には私たちふたりが一番乗りでしたが、やがてわらわらと「ひょうたん的な人々」が集まってきました。メンバーは女性ひとり、男性ふたり。なかには1時間以上かけて熊本からきてくださった方も。全員が松岡正剛氏が校長で、中野さんが師範をつとめている「ISIS編集学校」九州支所「九天玄氣組」の仲間たちなのだそうです。

私たちが予約していたお料理は、その名も「ひょうたんコース」。季節の串揚げ11品にサラダ、特製だし茶漬け、季節のデザートまでがセットになっています。こちらの串揚げの特徴は、良質な米油だけを使い、においも少なく胃にもたれないこと。春ごぼう牛肉巻き、えんどう豆のはんぺん、よもぎ麩の田楽など、串揚げとは思えないほどメニューもバラエティ豊かでおしゃれ。そのなかで、新じゃがいもの串揚げが運ばれてきたとき、その場の全員が「これは、ひょうたんだ!」と声に出しました(写真⑥)。さらに、モッツァレラチーズとトマトののった串揚げも「これもひょうたん型ですね!」(写真⑦)と大ウケ。

私は「ああ。これが、ひょうたん的な人々だということなのね……!」と胸が熱くなりました。中野さんは、ひょうたんに理解がある人ばかりを集めてくださったのです。一般に、「ひょうたんひょうたん」と大騒ぎすれば、たいていの人の顔には「?」マークが浮かびます。ちょっと引かれることもあります。しかし、このメンバーは全員がにこにこしながら、ひょうたんについてのバカ話から、普通の人にはどうでもいいウンチクにまで耳を傾けてくださいました。

私は気分が良くなり、つい調子に乗ってしゃべりすぎてしまったかもしれません。その勢いで、お店の人にもずっと気になっていたことを尋ねてしまいました。

「このお店は、なぜひょうたんという名なのですか?」

「ひょうたんは縁起がいいから」とか、おそらくそういう答えが返ってくるだろうなと思っていました。ところが、店長さんの口から飛び出したのは、予想の斜め上をいく回答でした。

「僕が東京で料理修業していたときに住んでいたアパートが、『メゾン・ひょうたん』という名前だったんです。そこから独立していった先輩たちが、みんな成功しているので……」

その回答に、「ひょうたん的な人々」一同が騒然としたのはいうまでもありません。

(737日目∞ 4月27日)