ひょうたん楽器としては王道とはいうものの
by 奥田亮
どーん!どすーん!ドシャッ、先週来聞こえてくる屋根の雪の落下音に続いて、ワーッとはしゃぐような声がしました。外を見てみると下校途中の中学生が数人何やら騒いでいます。うちの屋根の雪が落下して、すんでのところで当たりそうになったようでした。幸い当たりはしなかったようで、ふざけあいながら帰っていきました。見上げてみると屋根に積もった雪が完全に氷状になってはみ出し、今にも落ちそうです。そして、中学生が騒いでいたあたりがごっそりと欠け落ちています。ああ、これが落ちたのか。これはマズいな。でも、多少下から棒で突いたところでビクともしません。これは自然に解けるか、落ちるのを待つしかない。とはいえ、何もしないわけにもいかないので、せめて注意喚起と、柱に「落雪注意」の看板を貼り付けました。春は一歩先まで近づいています。
さて、先週の続きです。底に穴を開けて柿渋を塗ったUFO。表面にサンドペーパーをかけている時に変に力が入ってパキっと割れてしまったので、とりあえず割れたところを瞬間接着剤で貼り付けました。もともとギリギリオッケーなぐらいの厚さしかなかったので、割れるのは必至だったのだと思いますし、よくみるとあちこちひび割れもしていました。そんなことで、あまりひょうたんに負荷を掛けるようなものはできなさそうです。
そういえばこれまで作ってきた楽器は弦楽器が多く、吹奏楽器も少しは作りますが、打楽器系はなぜかあまり作ってきませんでした。ということで、今回はひょうたん楽器としては王道ともいえるガラガラを作ることにしました。マラカスやギロなど主に南米の打楽器や音具は、ひょうたん楽器としては主流ともいえます。超あまのじゃくな私が手を出さないのは、まあ当然といえば当然だったのかもしれません。
とはいうものの、やっぱりそんじょそこらのガラガラを作る気にはなりません。ノリノリの快活なリズムを刻むマラカスは、たぶん自分の志向する音楽には必要を感じませんし。なので、なんかゴロゴロして低い音のガラガラがいいなと思いました。そこで、中に入れる「石」は、大豆にすることにしました。大豆は一昨年栽培して収穫したものの一部が、サヤに入ったまま放置されていたので、それを使うことにしました。中に大豆をいくつか入れて、開けた穴には和紙を貼って密閉。その上からまた柿渋を何度か塗りました。
さて、どんな音になったでしょう。ちょっと動画を撮りましたので聞いてみてください。和紙に大豆が当たってゴロゴロ低い音を奏でます。楽器というより、単にノイズと言った方がいいような。使いようによっては面白いかもしれません。さて、この楽器、出番があるでしょうか? でれろん。
(708日目 ∞ 3月7日)
- 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。