大報恩寺の節分 ∞ おかめはひょうたん似

by 丸黄うりほ 

①大報恩寺(千本釈迦堂)・本堂

②法螺貝を吹く僧侶たち

③番匠保存会による「木遣音頭」

④茂山千五郎社中による「古式・鬼追いの儀」

⑤こちらの「福の神」は「おかめ」です

⑥一同そろっての豆まき

⑦「福豆」はひょうたん似の殻付きピーナッツ

⑧じつはとても悲しい話が伝わるおかめ像

 先週は北野天満宮の節分について3日間にわたってレポートしましたが、きょうも節分の話の続きです。節分で引っ張るなぁ……。そうですね。でも、もう1日だけお付き合いくださいね。

北野天満宮から歩いて5分ほどのところに、大報恩寺、通称・千本釈迦堂とよばれる真言宗の寺があります。当日、こちらの節分会が15時から始まるという情報をキャッチ。北野天満宮の節分会のあとに行ってもじゅうぶん間に合うということで、お参りすることにしました。

大報恩寺は鎌倉時代に義空上人によって開かれた寺で、本堂は当時建てられたもの。応仁の乱、文明の乱の大火災を奇跡的に免れた京都市内最古の建造物として、国宝に指定されています(写真①)。

お坊さんの説明によると、こちらの節分は「おかめ福節分会」と呼ばれ、「福の神」が「おかめ」なのだそう。「おかめ」といえば「おたふく」と同じものだろう、ということは北野天満宮と同じ「福部の社」がここにもあるのかな?と思ったら、全然違うらしい。「おかめ」というのは、本堂を建てた大工の棟梁の妻の名「阿亀」からきているそうなのです。

お寺に伝わる話によると……。

大工の棟梁が、大切な柱の寸法を間違えて切断してしまい、苦悩していたところ、妻の阿亀が「枡組(ますぐみ)で補えばどうか」という助言をして窮地を救った。おかげで工事は滞りなくすんだ。ところが、その後なんと阿亀は自害してしまう。「女の知恵で助かった」と悪口を言われるのがたまらなかったからというのですが、本当だとすると、いろいろとひどい話ですね。その後、彼女を偲んで境内に塚が建てられ、全国のおかめ信仰はこのお寺から始まったとも言われているらしいです。

「そんな重たい話だったのか……」と、私はずどーんと暗い気持ちになりました。が、お話が終わるとすぐ本堂に上七軒の舞妓さんたちが登場し、日本舞踊を奉納。場があっというまに華やぎました。舞妓さんが引っ込むと、今度は裏手から法螺貝の音が聞こえてきました。お坊さんの列が節分会の開始を告げます(写真②)。

最初に現れたのは、拍子木を手にした黒服の男性たち。番匠保存会による「木遣音頭」です。これがめちゃくちゃかっこいい! 拍子木と男声だけなのですが、とても美しい旋律で、聞き惚れてしまいました。番匠というのは宮大工のこと。つまり、彼らは「おかめ」の夫たちですね(写真③)。

続いて、おかめ像前での法楽と、本堂での厄除祈願法要が行われ、これが結構長時間でした。小雨が降ってきてますます寒くなってきましたが、本堂の前に集まった観客たちは次の演目を待ち構えています。

満を持して「古式・鬼追いの儀」が始まりました。北野天満宮の「北野追儺狂言」と同じく茂山千五郎社中によるものですが、演出はまったく別物。冒頭から複数の鬼がわらわらと出てきて大暴れ。豆を持った人間たちと激しく応酬します。本堂が広いこともあって、アクションが大きい!かなり派手で演劇的な感じがします(写真④)。

そこへ「福の神」である「おかめ」が登場!手には打ち出の小槌をもっています(写真⑤)。鬼たちはそれを向けられるとダメらしい。多少抵抗はしてみたものの、最後には全員がほうほうの体で退散していきました。

鬼が払われて再び平和がもどってきた本堂に、お坊さんたちと出演された舞妓さんや狂言師さんたちがずらり並んで、最後は恒例の豆まきです(写真⑥)。こちらの「福豆」は、殻付きのピーナッツ。人が多くて受け取れないだろうとあきらめていたら、「みなさんにもれなくお配りします」とアナウンスが!

ピーナッツといえば、形がひょうたんに似ているという日記を書いたこともあるのですが(678日目)、うん。やっぱりちょっと似てますよね!(写真⑦)

そして、下ぶくれの「おかめ」も、やはりひょうたんに似ていますよね……?

(695日目 ∞ 2月15日)