ひょうたんに形が似ている達磨さんの話

by 奥田亮

大変遅ればせながら、あけましておめでとうございます。本年もでれろんっとよろしくお願い申しあげます。本年最初のでれろん暮らし、ひょうたん話はちょっと横に置いて、ひょうたんに形が似ている達磨さんの話。

昨年もご紹介しましたが(でれろん暮らしNo.37)、1月14日、15日に小布施町内の皇大神社で「安市(やすいち)」が開かれます。安市では達磨の露天商が境内ところ狭しとひしめき、大いに賑わいます。お参りに来られた方は、去年の達磨やお札を納めてお焚き上げしてもらい、新しい達磨を買って帰られます。お焚き上げは14日の夜に行われるのですが、今年は商工会の役が回ってきて、その係として準備から片付けまでべったり関わることになりました。

達磨お焚き上げ。会場設営はまず除雪から

今年はホントに雪が多くて、前日も吹雪。当日朝になってもまだ降り止まず、朝9時からの準備作業は雪かきから始まりました。除雪が終われば、受付のテントを設置し、お焚き上げをする場所の周囲に竹を巡らせて結界を作ってひとまず解散。午後からは交代で受付。去年の達磨を持ってお参りする方が次々に訪れ、あっという間に達磨がうずたかく積み上げられました。持ち込まれるダルマは大小様々ですが、企業や会社の達磨の中には高さ60センチはあるでしょうか、特注サイズのでかーい達磨もあってビックリ。コンコンと叩くといい音に響きます。ああ、こんな達磨をスピーカーにしたらさぞや低音が響いていい音だろうな〜、もしかしたらベースアンプにできるかも(達磨のスピーカーについてもNo.37参照)。どうせ燃やされるんだったら、もらって帰ってもいいんじゃないか? でも、縁起物だからそういうわけにもいかないよなあ……。でも、買ったらきっと高いだろうなあ……。などと心にヨダレを垂らしながら見ていたら、もう1つほぼ同じ大きさの大きな達磨が運び込まれてきました。わー、ステレオ! この2つがあればきっと……。妄想はどんどん膨らみます。

次々集まる去年の達磨。一番手前のがでかい! 欲しい!

着火を待つ達磨たち

そうこうしているうちに日も暮れて、いよいよ着火にむけた準備。結界の中に3つの達磨の山を作り、見栄えのいいように前の方には大きな達磨を据えます。うーん、立派な達磨は、やっぱり燃やす時にも相応の扱いを受けて最期を演出してくれるんですね。縁起物って、1年使って燃やされて、また新しいものに買い換えてという循環に価値を見出しているということでしょうか。やっぱりそれをもらってきて別の用途に使うのは、その循環に途中から横入りするみたいなことになってあんまり良くないのかもなあ。そんなことをぐちぐち考えていたらいよいよ着火の時間と相成りました。まずは乾杯から。結界を作った時に使った竹を短く切った即席のコップに熱燗が注がれます。はあ〜、冷え切った体に沁み渡る〜。竹の香りもいい感じです。

竹を切った杯に熱燗と焼き鳥で乾杯

安市の夜は更けてゆく

いよいよ着火

勢いよく燃え盛る達磨たちは、炎に包まれて次第に白く灰になっていきます。その間にも次々に運び込まれる達磨を、受け取っては燃やし、受け取っては燃やし。それでも2時間もすれば人も減り、炎も弱くなって、その日は解散となりました。

白く灰になっていく達磨

翌日は午後から、結界の中に祭壇が作られ、神社周辺を猿田彦の先導で周る「お練り」が到着して神事が執り行われて終了となりました。例年であれば、このお練りに山伏も加わって、達磨を焼いた灰の上を歩く火渡りの神事が行われるのですが、ここ2年は密を避けるということで中止になっています。我々商工会は祭場をきれいに片付けてようやく全ての役割を終え、その後は直会です。私は今回、直会はご遠慮申し上げて帰ってきました。

こうして新年の長い2日間がようやく終わりました。この役は9年続くと言われているのですが、9年後って商売やってるのかな? いや、生きてるのかな? でれろん??

(675日目 ∞ 1月17日)

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。