有馬ひょうたんレポ(その8)銀の湯と温泉寺
by 丸黄うりほ
ひょうたん町を通りすぎて、有馬の街をぐねぐね歩いていると、ふじっこさんと私はいつしか「温泉寺」にたどり着きました。
「温泉寺」は、奈良時代に行基上人が開いたと伝えられている古刹。このお寺の阿弥陀堂で豊臣秀吉が「有馬大茶会」を開いたとも伝えられています。しかし、そのお堂は明治時代の廃仏毀釈で取り壊され、もともとあった「真言宗 温泉寺」は廃寺に。奥の院であった黄檗宗のお寺が後を継ぎ、禅寺として現在に至るのだとか(写真①)。
「温泉寺」の横には長い石の階段が続いていました。それを上りつめたところには「温泉神社」があります。ここに祀られているのは大己貴命、少彦名命、熊野久須美命の有馬鎮護三神。そうです、12月2日(650日目)の「ひょうたん日記」で紹介した太閤橋のたもとにあった「袂石」の伝説にも登場してくる熊野久須美命が、ここにも祀られているのです。
ふじっこさんと私は、「お寺や神社なら、きっとひょうたん物件がみつかるだろう」と期待していたのですが、「温泉寺」にも「温泉神社」にも、ひょうたんや太閤秀吉にまつわるものを何一つ見つけることはできませんでした。しかも、神社のほうは写真を撮ることすら忘れてしまいました。
「温泉神社」の坂を下り、細く曲がりくねった小道を歩いて行くと、二人ともだんだんと方向感覚が怪しくなってきました。今どっちを向いて歩いているのかな?街のにぎわいから遠ざかってきているのはわかっていましたが、雰囲気のいい坂道がどこまでも続くので、なんとなくそのまま外れていきました。ひょうたんを探しつつも、気分はゆったりチルアウト。
そんな二人の目に飛び込んできたのは、「銀の湯」の青いのれんです(写真②)。
「金の湯」の赤いのれんの前に長い行列ができていたのに比べると、こちらはかなり静かでした。そして、「金の湯」ののれんには秀吉の馬印・千成ひょうたんマークが燦然と輝いていたのに……
なんと、「銀の湯」ののれんには、ひょうたんマークがありませんでした(泣)。
「銀の湯」は、「金の湯」と対をなす日帰り温泉で、こちらは「炭酸泉、ラジウム泉」。まったく成分や肌触りの違う温泉が、これほど近くで湧き出ているというのが有馬温泉のすごさ。おそらく、どちらの湯も太閤秀吉に愛されていたはずなんですが、やはり金色のほうが秀吉のイメージなのでしょうか?
「温泉寺」「温泉神社」に続いて「銀の湯」までも、ノーひょうたん。とってもつらい。しかし、落ち込んでいても仕方がない。気をとりなおして歩き出すと、「タンサン坂」に出ました。炭酸せんべいの老舗「泉堂」の工場で私は山椒入りの炭酸せんべいを購入。ふじっこさんは、近くの別のお店で「ありまサイダーてっぽう水」を買いました。(写真③④)
あら、ここまで歩いたのに、もしかしたら今日の「ひょうたん日記」にはひょうたんの写真がない……?
しかし、二人はこのあとすぐ予期せぬひょうたん物件に出会うことになったのです!
(659日目∞ 12月15日)
(明日に続きます)