ひょうたんのお灸・吸いふくべ実験(その1)

by 丸黄うりほ

①吸いふくべの器具

②『与論町誌』に吸いふくべ(チブルビキ)の記事が!

③ヤマミーさんによる『与論町誌』メモ

④千成ひょうたんを横に切ってみた

⑤切り口はこんな感じ

⑥タネが115個も出てきた

⑦『与論町誌』に出ていた「点滴法」を試してみる

⑧焦げてしまいました……! 

ヒョータニストの一人、和泉市のヤマミーさんのお仕事は鍼灸師。というわけで、昨日は中国からヤマミーさん宅に届いたひょうたんのお灸の写真を紹介しました。このお灸がどういうものなのかは、また後日詳しく紹介できたらいいなと思っています。

それに先立って、きょうと明日の二日間は、これまでにヤマミーさんが独自に進めてきたひょうたんのお灸についての研究発表をしていきたいと思います。去る8月5日(569日目)の日記でも、「箱灸」をヒントにしたヤマミーさんオリジナルのひょうたんのお灸について書きましたが、きょう紹介するのはそれとは違うシステム。

もともとヤマミーさんがひょうたんに興味を持つきっかけになったのは、「吸いふくべ」と呼ばれるセラピーだったそうです。「吸いふくべ」は、「吸い玉」とか「カッピング療法」とも呼ばれ、ガラスや陶器、竹などのカップ状の内部を真空状態にして皮膚に密着させ、陰圧にすることで一時的に鬱血状態にし、カップを外すことにより血液が一気に流れて血行促進効果が期待されるといわれているもの。写真①は、ヤマミーさんが台湾で撮影したものだそうですが、本来はこのような器具を使って行うのですね。

この「吸いふくべ」。「名前にふくべとついているということは、ひょうたんで作れるかも?」と感じたヤマミーさんが、古代医術や中国医術などの文献を調べていくと……。

『明治前日本医学史』(日本学士院日本科学史刊行会)に、「吸いふくべ」療法についての記述が見つかりました。ただ、それには「青竹筒を用いた」とあり、「ふくべという名前は形が似ているからつけられた」という内容。ほかの文献を調べても、動物の骨、竹、ガラス、青銅などが出てくるばかりで、ひょうたんで作ったという記述は出てきません。

ヤマミーさんは、「青竹筒といえば、沖縄のチブルに形が似ているな」と思い当たりました。沖縄ではチブルと呼ばれるナガユウガオを食べる風習があるのだそうです。ユウガオといえば、ひょうたんに極めて近い植物。そこでさらに調べていくと、『与論町誌』(与論町誌編集委員会編)に、「チブルビキ」と呼ばれるひょうたんを使った民間療法の写真が載っているという情報をついに入手したのです!

しかし関西圏の図書館にはなさそう……ということで、司書に相談。調べてもらった結果、奇跡的にヤマミーさんの母校にあるということがわかり、借りてくることができました。ここまで長い道のりでした!

ヤマミーさんのメモによると、「チブルビキ 吸血治療 チブルとはヒョウタンのことで、小さなヒョウタンの充実したものを利用して、肩こりや打撲の時に患部を刀で少し切って、これに濃度高い酒を入れ、火をつけて患部にあて、血をとり出すのに使う」(写真③)。

これは、「吸いふくべ」を陰圧にする方法の一つ「火缶法」の、「点滴法」と呼ばれるものに当たるとヤマミーさんは判断。そこで、実際にやってみることにしました。

まず、今年栽培して収穫したばかりの千成ひょうたんを、『与論町誌』の写真を参考に切りました。この時、1個のひょうたんの中から115個ものタネが出てきたそうです。(写真④⑤⑥)

ひょうたんの内側にアルコールを垂らし、切り口の部分を避けてまんべんなくなじませます。そして、点火して素早く患部に吸着させます(写真⑦)。

しかし……、どうも吸い付きが弱い。3秒くらいしか吸い付かず、しかもひょうたんが焦げてきました……!(写真⑧)

これはダメかも……。ということで一旦中断。しかし、ほかにも方法はあるのではないかと考えたヤマミーさん。「吸いふくべ」実験は明日に続きます!

(641日目∞ 11月18日)