東洋陶磁美術館の麗しひょうたん(その3)

by 丸黄うりほ

①「金地五彩 蝙蝠文 瓢形鼻煙壺」

②「真鍮陰刻 花文 瓢形鼻煙壺」

③「七宝 博古文 鼻煙壺」

④鼻煙壺は陶磁、ガラス、金属、貴石・石、動植物などで作られたとあります。動植物…?

⑤「瓢箪印花 寿字文 鼻煙壺」

⑥「瓢箪 鼻煙壺」

 

 大阪市立東洋陶磁美術館でのひょうたん探し。一昨日は日本陶磁、昨日は韓国陶磁と中国陶磁のコレクションから、出会えたひょうたんを紹介してきました。

3日目のきょうは2階の「Gallery K」に展示されている「沖正一郎コレクション鼻煙壺コーナー」をクローズアップ!じつは、ひょうたん好きのみなさんにはこのコーナーがいちばんおすすめであります!

とはいえ、鼻煙壺って何?沖正一郎さんとは?という方がほとんどだと思います。私もこの展示を見るまで知りませんでした。

沖正一郎さんは初代ファミリーマート社長、良品計画の会長などをつとめていた実業家。30代のころから陶磁器の収集をはじめ、2008年に鼻煙壺1200点のコレクションをこの美術館に寄贈されたのだそうです。

鼻煙壺とは、嗅ぎタバコを入れる小さな容器。嗅ぎタバコは粉末状のタバコで、17〜18世紀ヨーロッパの王侯貴族の間で大流行。その後、清朝の宮廷でも流行し、しだいに一般にも普及していったのだそうです。ヨーロッパでは箱型の容器が使われていましたが、中国では湿潤な気候に合わせた密閉式の中国独自の容器が生まれ、それが鼻煙壺と呼ばれるようになったのだとか。

鼻煙壺はほとんどが手のひらにのるサイズ。実用品であるとともに愛玩品でもあり、磁器、ガラス、玉、瑪瑙、水晶、象牙、金属などさまざまな材料で、高度な技術を用いて精巧な装飾を施したものが作られました。

また、中国の工芸品の模様は伝統的にいろいろな意味を込めたものが多いのですが、とくに鼻煙壺には吉祥文様が多く用いられているらしい。常に携帯するものですから当然かもしれませんね。

そうです、ひょうたん好きのみなさんならもうお気づきですよね。ひょうたんは中国では子孫繁栄、長寿、冨貴、栄達などおめでたいことのシンボル!

このコーナーでは、1200点のコレクションのなかから随時入れ替えつつ紹介されているようです。この日見ることができたひょうたんはこれ。写真上から順に紹介していきましょう!

写真①「金地五彩 蝙蝠文 瓢形鼻煙壺」は、きんちゃくひょうたん型の陶磁に、さらにひょうたん意匠と、これまた縁起のいい蝙蝠意匠を施したゴージャスな品。②「真鍮陰刻 花文 瓢形鼻煙壺」は、真鍮で作られたかっこいいひょうたん。③「七宝 博古文 鼻煙壺」は、七宝。おだやかなくびれのひょうたんに、凝った装飾が施されています。

写真④の説明文に詳しく書かれていますが、鼻煙壺はさまざまな材料で、当時の技術の粋を尽くして作られていたことがわかります。いちばん下に「動植物」とあるのが見えるでしょうか?

そのような本物の贅沢品であった鼻煙壺は、ひょうたんをかたどって作られただけではなく……なんと、植物のひょうたんからも作られていたのです!

写真⑤「瓢箪印花 寿字文 鼻煙壺」をご覧ください。こちらは、ひょうたんで作られた鼻煙壺です。蔓の部分にひょうたんのアイデンティティが残されていますね!これは、栽培時に「福」や「寿」などのおめでたい文字を刻んだ枠をとりつけて、その中で実を育てて作ったものだと思います。

さらに、写真⑥「瓢箪 鼻煙壺」は、小さなサイズのイボひょうたんをそのまま使って、蓋の部分に彫刻した貝を取り付けたもの。

ひょうたん型だけでなく、本物のひょうたんでも作られた鼻煙壺。中国の人々のひょうたん愛が、ここでも感じられてうれしくなります!

(636日目∞ 11月11日)