東洋陶磁美術館の麗しひょうたん(その2)
by 丸黄うりほ
昨日に続いて、きょうも中之島の大阪市立東洋陶磁美術館のひょうたんについてレポートしていきます。
美術館の「Gallery A」から「Gallery C」までの区画は、韓国陶磁室。高麗時代、朝鮮時代の粉青、磁器が系統的に展示されています。また、3階の「Gallery D」は、経済学の学者で韓国陶磁愛好家・研究者としても知られるイ・ビョンチャン博士による韓国陶磁のコレクションが展示されています。
この区画で見つけたひょうたんは、まず写真①の「黒釉 瓢形瓶」です。この姿を見た時、思わず口から「美しい!」という言葉が漏れました。なんという優雅なひょうたん型でしょう!この黒釉の色ツヤも素晴らしいですが、ひょうたん好きとしてはフォルムに目が釘付けになりました。
説明文によると、瓢形瓶は中国で始まりましたが、高麗時代(12〜13世紀)にはこのように上下に引き伸ばしたような流麗な形をとるものが多くなったのだそうです。黒釉をかけた瓢形瓶の大作は珍しく、現存するものは数点を数えるのみだとか。
写真②の「青磁陽刻 蓮花牡丹文 瓢形水注」は、イ・ビョンチャン博士のコレクションから。これも高麗時代の瓢形水注で、上下のふくらみが流れるようにつながっているフォルムが「黒釉 瓢形瓶」にも通じます。胴部には蓮と牡丹の花文が交互に配され、持ち手の形もエレガント。
かわって、「Gallery G」から「Gallery I」までの区画は、中国陶磁室。後漢、宋、元、明時代の陶磁を年代順に鑑賞できます。そのなかで、ひょうたんの陶磁は明時代に集中していました。
写真③の「青花 瓜文 碗」は、ひょうたんではなくウリですが、巻きひげといい、丸い実といい、たまらない可愛さです!陶磁のなめらかさにもため息が出ます。説明文によると、この碗は明時代成化年間(1465〜1487年)の官窯磁器。精製された胎土、なめらかな釉、繊細典雅な文様という特徴をもち、完成度が高く伝世品が少ない貴重品で、ウリは豊穣を意味する吉祥文様なのだとか。あらっ、縁起がいいのはひょうたんと同じですね!
写真④⑤は明時代嘉靖年間(1522〜1566年)、⑥も16世紀のもの。説明文によると、瓢形瓶は嘉靖帝が道教に傾倒していたことから、この時代に盛んに作られたのだとか。道教とひょうたんの関係については、もう少し勉強して、この日記にまた書いてみたいと思っています。
④の「緑地虹彩 宝相華唐草文 瓢形瓶」は、白磁を焼き上げた後に赤絵の具で宝相華唐草文を描き、白地に緑釉を塗り再焼成したもの。⑤の「黄地青花虹彩 牡丹唐草文 瓢形瓶」は、唐草を描いた青花を焼き上げた後、白地の部分に黄釉を塗って焼成し、牡丹花を虹彩で表して再焼成したものだそう。どちらも、ものすごい手間がかかっているのですね。
そして、韓国のひょうたん型と比べると、中国のひょうたん型は上下のふくらみが丸く、くびれがはっきりしていることにも気がつきます。現在、「中国ひょうたん」として伝わっている栽培種も同じようにくびれが強い。このくびれの強さが中国人の伝統的な好みだということなのでしょう。
⑥の「五彩金襴手 瓢形瓶」は、八角に面取りした瓶の表面を12に分けて、全面に赤・黄・緑の上絵の具で文様を施した後、さらに金彩を加えた豪華なもの。金彩装飾は「金襴手」と呼ばれて日本の茶人が愛好したのだとか。
ひょうたん型の好みにも国による違い、時代による違いがある。本当に面白いですね。
(635日目∞ 11月10日)