月のような「ドミティアヌス」の実を鑑賞する
by 丸黄うりほ
ひょうたんを栽培していると、何度もうれしい瞬間に出会います。タネが発芽したとき。双葉になったとき。花が咲いたとき。実を結んだとき。そして、最大の喜びはやはり実を収穫したときです。
ひょうたんは結実してもすぐには収穫できません。完熟して皮がしっかりと厚くなるまで、気長に60日以上待たなければならない。ひょうたんとのお付き合いに、あせりは禁物。時間はかかるけれど、それがまた愛を深めるのです。
7月に結実した「ドミティアヌス」の実は、約3カ月たって表面がすっかり白くなり、まるで月のような美しさに仕上がりました。夜空のような紺色のフリースの上に実を並べて、じっくりと鑑賞することにいたしましょう。
その前に念のため書いておきますと、このひょうたんは、ハワイの「イプヘケ」と呼ばれる打楽器の、「オロ」という部分に使われるひょうたんです。なので、品種名としては「オロ」と呼ぶのが正しいのかもしれません。しかし、この「ひょうたん日記」ではずっと品種名「イプ」と呼んできました。そして、「ドミティアヌス」というのは、我が家でつけた呼び名です。猫に「タマ」とか犬に「ポチ」とかつけるようなものです。
「イプ」は、一般的なひょうたん型のひょうたんのように強いくびれはありません。特に我が家の「ドミティアヌス」の実にはほとんどくびれがなく、水のしずくのような、涙のような形。また、「イプ」の表皮には、濃い緑色に白い斑点の出るタイプもあることがわかりましたが、「ドミティアヌス」の実はほぼ真っ白です。個体差が大きいのもこの品種の特徴なのかもしれません。
7月7日、最初に結実した「ド実1号」は、なめらかな曲線美でなかなか端正な実。4個のなかではややずんぐりした形。ベランダの外側にできていたので細かい傷があります。
次に結実した「ド実2号」は、ベランダのフェンスに挟まったまま成長したため、全体的に形がいびつで、おなかにはフェンスの型がくっきり。また、裏側やお尻にもいっぱい傷があります。変な形に育ってしまいましたが、育て主は面白がっています。水つけをするとどんなひょうたんになるのか?とっても楽しみです。
7月中旬に結実した「ド実3号」は、今回収穫したひょうたんのなかで最大の、高さ30センチ。とはいえ「ド実1号」よりもややスリムなので、この2つの実の容積は同じくらいかもしれません。お尻がプランターについていたので少しへこみがありますが、これもまあ美形といっていいでしょう。
「ド実4号」はやや小ぶりですが、とてもかわいい。「ド実2号」は例外として、今回収穫したなかで、この実がいちばん好きな形です。手に持ったときの重さもちょうどよく、撫でているだけで心がまるーくなる感じ。
できればずっとこうやって眺めていたいけれど、収穫した実をそのままにしておくとカビが生えて全体が腐ってしまいます。そろそろ時間だよ、というわけで、明日はいよいよ水つけを行います。
(627日目∞ 10月28日)