大阪天満宮で見つけた瓢遊さんの瓢箪石
by 丸黄うりほ
大阪天満宮の境内で毎年秋に開催されてる「天神さんの古本まつり」。今年も10月15日から19日にわたって20店舗以上の古本屋さんが集まり、希少本から100円本までがずらり並びました。
私も16日に出かけたのですが、いい本を安く入手できてほくほく。お天気もよく、人出もちょうどいい感じで、なかなかの盛況でした。
で、ちょっと疲れたので境内をぶらぶら歩いていたら、私のひょうたんアイが「ガーガーピーピー」と激しく音を立てているではありませんか。ひょうたん関連本を見つけたのか?違う!もっと大きいものだ!
ええっ、こ、これは?
瓢箪石?
近寄って見てみると、高さ1メートルほどある不思議な形をした石でした。立て札に「瓢箪石」と書いてある。そう言われてみれば、上と下のふくらみが二段になっていて境目があり、上のふくらみ部分には、ひょうたん型をした穴もあいている。私はとっさに、「こういう形の石が太閤園の庭にもあったな」(5月21日、517日目)と思い出しました。太閤園のものと比べるとひょうたん穴は丸くてはっきりしないけど、石全体のひょうたん度はこちらが上かもしれない。
さらに立て札をよく見ると、歌が書かれています。
「神垣の松にかがけてなりひさご久しく世にてらすともし火」
さらに署名が、「瓢遊」、「明治12年ごろ」。
えっ! 瓢遊!
これって、あの料理旅館「瓢箪屋」の瓢遊さんのこと?
この日記を愛読いただいている方は覚えてらっしゃるかもしれませんが、瓢遊さんについては「でれろん暮らし」で奥田亮さんが言及されていたこともあります(7月5日、548日目)。
瓢遊さんは、幕末から明治にかけて蟹島新地(今の北浜一丁目あたり)で高級料理旅館「瓢箪屋」を営んでいた人物で、本名は帯屋源兵衛。無類のひょうたんマニアで、旅館で使う食器や浴衣、座布団などはもちろんのこと、茶道具、書画、骨董などありとあらゆるひょうたんグッズを収集していたそうで、宮里瓢遊という名でも知られていました。瓢遊さんが所有していた大ひょうたんと、豪商の鴻池家が所有していたひょうたんの大きさを比べる「瓢箪比べ」というイベントも行われ、瓢遊さんが勝利して当時評判になったこともあったらしい。それら瓢遊さんが集めていたひょうたんグッズは、現在は大阪歴史博物館に寄贈されているそうです。
しかし、なぜこの石が大阪天満宮にあるのだろうか?調べてみると、瓢遊さんは天神さんを崇敬していたのだということがわかりました。また、当時の文化人であり、歌を詠んでいた。大阪天満宮には西山宗因が創始者の連歌所もあったそうですから、粋人の集うサロン的な場でもあったのでしょう。
そして、この大きな瓢箪石を奉納されたらしいのです。
ひょうたんが好きである。私はこの一点だけで、時代も境遇も飛び越えて親しみを覚えます。これから大阪天満宮にお参りに行った際には、瓢箪石にも手をあわせてこようと思います。みなさんも、ぜひ境内を散策して瓢箪石を探してみてください。
(620日目∞ 10月19日)