中年ひょうたん「ドミティアヌス」との対話
by 丸黄うりほ
季節は立秋を過ぎて処暑のはずなのに、毎日暑いですね。我が家のベランダの温度計も35℃を超えています。
栽培中のひょうたん・イプの「ドミティアヌス」は、受粉と結実のピークが一段落して、ちょっと一休み。ぼちぼち体力が戻ってきたので、また新たな蔓が伸びてきています。
ひょうたんの一生を人間にたとえると、処暑のひょうたんは中年ということになるかと思います。この時期にすっかり勢いがなくなり、病気などにかかってそのまま逝ってしまうひょうたんもありますが、たいていの株はまだいけます。ここからもう一度花が咲いて実がなって、第二のピークがやってくる。昨年我が家のベランダで栽培した百成ひょうたんの「ティトゥス」などは、後半のピークのほうが、やや不調だった前半よりもずっと多くの実をつけました。
この日記の書き手の私が中年であるせいか、どうもこの時期のひょうたんは他人のような気がしません。その気持ちが、テレパシーのように私の脳にひびいてくるのです……。
「……呼んだか?」
「はい。ドミティアヌスさま。本日はご機嫌いかがでございましょう?」
「暑いな。たっぷりの水とハイポネックス、それにメネデールを所望する」
「承知いたしました」
「それから白髪を抜いてくれ。こんなにあると年寄りくさく見える」
「黄色い葉でございますね、ただちにお取りしましょう……。はっ!」
「なんだ、どうしたのだ?」
「大量のアブラムシがおります!」
「うわぁ早く退治しろ!」
「はいっ、ただちに!」
「はあ。アブラムシがこのように出るとは、私も相応の年をとったということだな……」
「いえいえ、ドミティアヌスさまはまだまだお若い。その証拠にご覧くださいませ。花も咲いておりまする」
「たった一輪だけではないか。しかも雄花だ」
「これからきっと姫もお出ましになるでしょう」
「もう実は4個できておる。これ以上いらぬわ」
……うーん。どうも、今年のひょうたん「ドミティアヌス」帝はノリが悪い感じですね。昨年の「ティトゥス」帝の同じ時期のように「おれは、まだまだ若い。これからガンガン行くぞーーー!」という気概に欠ける。しかし、元気がないというのではありません。静かな暮らしを望んでいる、のんびりした中年という感じ。
まあ、花だらけのイケイケひょうたんでなくてもよいです。帝が元気でいらっしゃるならば、その葉の色や、巻きひげが描く螺旋の美を後半生も楽しませていただきましょう。
(584日目∞ 8月27日)
※次回585日目は奥田亮「でれろん暮らし」、8月30日(月)にアップ。
586日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、8月31日(火)にアップします。