イプという難しいひょうたんについての考察
by 丸黄うりほ
イプはハワイ語でひょうたんという意味。フラダンスで使われるひょうたん楽器には、イプヘケと呼ばれるものと、イプヘケ・オレと呼ばれるものがあります。
イプヘケ・オレの「オレ」は、「ない」という意味で、こちらはくびれのある一般的な形のひょうたんで作られ、上部のふくらみ部分を真ん中あたりでスパッと横に切ってあります。
イプヘケのほうは、2種類のひょうたんを組み合わせて作られます。上に使うのは、「ケトル」と呼ばれる平べったい丸型のひょうたん。そして、下部に使うのが「オロ」と呼ばれる長細いツボ型のひょうたん。
信州・小布施のユカリさんによって採取され、ひょうたん師匠の奥田亮さんを通して我が家にやってきたイプのタネは、栽培してみてどうやら「オロ」のタネだったということがはっきりしてきました。
なので、このひょうたんの品種名については、イプではなくて「オロ」と呼んだほうが正確なのかもしれません。しかし、春以降ずっとこのひょうたんのことをイプと呼んできましたので、とりあえず今年の栽培については、このままイプと呼ぶことにしますね。
さて、このイプ「オロ」、なかなか気難しいひょうたんだと思います。とにかく花が咲きにくい。信州の奥田さん宅でも花が咲いていないようですし、淡路島のヒロミさん宅でも咲いていない。一緒に植えた他品種のひょうたんはすべて咲いているというのに。
我が家で発芽させて苗まで育て、もらっていただいた東淀川区のウーピーキッチン西山朝子さんからも先日久しぶりにメールが来て、「花が咲かない」とのことでした。北浜フレイムハウスの美佐子さんのところでは、花は咲いたけれど実はならず、そのかわり葉は元気で青々としていて、すてきな緑のカーテンになっているようです(写真①)。西山さんも美佐子さんもひょうたん栽培のベテランですから、とにかくこのイプ「オロ」、のんびりやを通り越して、気難しいやつだというしかない。
そんななかで、うまく結実したのが瓢箪山のフェイ・ターンさん宅です(写真②)。ストッキングのハンモックに乗せてもらって、気持ちよさそうにぶら下がっていますね。東大阪市のKFさん宅でも1個結実。しかしその後、雌花がほとんど咲かなくなりました。最近になってようやく新しい蔓が伸び出したらしいので(写真③)、第2の花ピークに期待したいところです。
我が家のイプ「ドミティアヌス」は、雄花と雌花の数が「300:7」という前代未聞の圧倒的雄花多数のなか、なんとか4個が結実。その後、実の成長が一段落したようなので油かすを追肥したところ、新しい蔓がにょきにょきと出てきました(写真④)。しかし、またしても花がついてない!
写真⑤はそんな中で唯一花芽のついている蔓です。手前のチューリップ型のが雄花の芽。その後ろに写っているのは蔓になる脇芽です。雌花は……まったく見当たりません(泣)。
どうやら、このイプという品種は、肥料の成分に対して過激に反応するように思います。窒素が少しでも多いと花がつかない。そこでリン酸を増やすと花芽はつきだすのですが、蔓の成長がぴたっと止まって先端が縮こまってしまう。いちいち極端なんです。
気難しいひょうたんのご機嫌をとるには、ハイポネックス……というわけで、普通タイプと開花促進タイプ、2種類のハイポネックスを「ドミティアヌス」帝に媚びつつ献上する毎日です。
(579日目∞ 8月20日)
※次回580日目は奥田亮「でれろん暮らし」、8月23日(月)にアップ。
581日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、8月24日(火)にアップします。