いなべのひょうたん島

by 丸黄うりほ

①ふじっこさんがみつけた郷土史の本『員弁の姿』

②いなべには「ひょうたん島」という口伝の遊びがある?

③ひょうたん島 (模写:丸黄うりほ)

 

「ひょうたん日記」を愛読してくださっているみなさまにはもうおなじみ、ヒョウタン総合研究所・所員のふじっこさん(こちらなど)。ふじっこさんが住んでいるのは三重県いなべ市です。

……と言いながら、私、じつはいなべ市に行ったことがありません。ふじっこさんと知り合うまでそんな名前の市があることすら知りませんでした。無知ですみません。

ウィキペディアで調べてみたところ、いなべ市は南北に細長い三重県の最北端に位置し、岐阜県と滋賀県に接しています。平成の大合併によって、2003年に員弁郡の北勢町、員弁町、大安町、藤原町の4町が合併して誕生した新しい市なのだそうです。

「さいたま」とか「たつの」とか、平成の大合併は由緒正しき地名を雑にひらがなにしてしまう傾向がありますが、「いなべ」はもともと「員弁」だったらしい。確かに読めませんが、書けない字ではないのに。

というわけで、きょう紹介する本のタイトルは、『員弁の姿』であります。奥付によると昭和59年に刊行されていて、員弁郡教職員組合が編集し、員弁郡教育研究会が発行しています。

ある日、ふじっこさんが資料室でこの分厚い郷土史の本をパラパラとめくっていると……、彼女のひょうたんアイが、「がーがー!!! ぴーぴー!!!」と鋭い音を立てて止まりました。

そこに紹介されていたのは「ひょうたん島」という遊び。それによると……。

まず、ひょうたん型を描いて、その中に「鬼」以外の全員がはいります。「鬼」は、ひょうたんの外側にいて、ぐるぐる回りながら中の子をタッチしていきます。タッチされた子は外に出て、最後まで残った子がいちばん強い子。

ただし、「鬼」がどんどん増えていくバージョンや、中の子を「鬼」が引っ張り出すという、ややワイルドな遊び方もあるらしい。図で解説されているように、㋑のようにひょうたんに橋をかけたり、㋺のように島を作って遊ぶ方法もあるようです。

「ひょうたん島」は道具もいらないし、それほど広くなくてもできそうだし、子どもたちも仲良くなれそうだし、なかなか良さそうな遊びですよね。何より最初に地面にひょうたんを描くというのが素敵です。見守っている大人たちも「おお、きみたち、じつにいいひょうたんが描けてるな!」とか言えそうだし。

しかし、いなべ市育ちのふじっこさん、そんな遊びはしたことがなかったらしい。あれっ?「ひょうたん島」はいなべの口伝の遊びだそうですが、すでに途絶えてしまったのかな?もっと上の世代の方ならご存知なのかもしれませんね。先生方、教育委員会のみなさん。いまこそこういう素朴な遊びの復活、すごく、すごくいいと思うんですけど……!!

(577日目∞ 8月18日)