七夕と植物イベールさんの節句会にて

by 丸黄うりほ

①雛人形を七夕に見立ててコーディネート

②雛道具を使った技芸上達を願う祭、乞巧奠(きっこうてん)見立て

③本物の梶の葉を水指の蓋としてお手前

④蹴鞠見立ての菓子器と、梶の葉見立ての銘々皿

⑤茅の輪、笹蟹、糸巻、朝顔、竹の蓋置

⑥長ひょうたんの形の短冊掛け

 

もう10日ほどたってしまいましたが、七夕の日、大阪市中央区で画廊を営まれているイベールさんの節句会に参加してきました。

というのも、お友達でヒョータニストでもあるRICAさんと、そのパートナーの宴パンダさんが、前回の5月5日、端午の節句会に参加されて、そのとき撮った写真をフェイスブックにたくさんアップされているのを見たのです。

そのなかに、ひょうたんでできた茶道具の降り出しの写真があったのです!

その可愛らしさときたら!

私はぜひその実物を見たいと思いました。それで、「次の機会があればぜひ誘ってください」とお願いしておりました。イベールさんの節句会はご自宅で行われているため、参加できるのは原則としてクチコミでお知らせをもらえた人だけなのです。

年に5回行われているイベールさんの節句会では、所蔵されている古美術や茶道具、作家物の陶器や人形などを見せていただくことができるのだそう。

私は、どきどきわくわくしながら出かけました。七夕といえば、ウリ(ひょうたん)から天の川が流れ出したという中国の民話もあることだし、きっとひょうたんにまつわるものがいっぱい見られるに違いない。

しかし、七夕ときいて最初にウリを思い浮かべるのはたぶん私のようなひょうたん狂いだけで、一般的には笹の葉をイメージする人が多いようです。パンダ好きでもあるRICAさんは、笹関連でパンダグッズが見られるんじゃないかと期待しているようでした。

イベールさんは、素敵なお道具やコレクションを見せてくださりながら、七夕の伝説やうんちくをとても楽しく、驚くほど流暢にお話くださいました。それによると……。

七夕における最重要植物はウリでも笹でもなく、梶の葉なのだそうです!

梶の葉は表面に墨で文字を書くとしっかり定着し、水に濡れても流れ落ちないという性質があり、紙のかわりに短冊として使われたのだそうです。また、その関連から、七夕のお茶会で水指の蓋として梶の葉を使うことが粋なおもてなしの証ともなったのだとか。

もうひとつ重要な植物として挙がったのは朝顔です。現在のアサガオはもともとタネが牽牛子(けんごし)という漢方薬として入ってきたもので、別称を牽牛花(けんぎゅうか)というそうです。ただし、古代に朝顔と呼ばれた植物は今でいうキキョウのことで、その後ムクゲが朝顔と呼ばれるようになったらしい。そんなわけで、現在ではキキョウ、ムクゲ、アサガオの3種類の七夕花を楽しむようになったそうです。その話を聞きながら、夕顔、つまりひょうたんの話もついでに出てこないかしらと私は思っていたのですが、出てきませんでした。

そんなわけで、ひょうたん的にはアテが外れたんですが、七夕に見立ててお部屋のあちこちに配された人形飾りや、調度品や、テーブルコーディネートはもう見事というしかなく、まさに眼福。

これは、参加したいという人がクチコミだけでどんどん集まってくるというのも頷けます。

お話の後、お茶とお菓子をいただきながら、私はイベールさんに例のひょうたんの降り出しのことを尋ねてみました。

すると、あれは端午の節句のものなのでもう仕舞った、とのこと。端午の節句にはひょうたんのものが多くあり、それは豊臣秀吉が千成ひょうたんを馬印にしていたため。ひょうたんが立身出世の象徴となり、節句飾りにも登場することになったということらしいです。

「また来年見せてください」と、私。

「あ、でも。きょうも階段の途中にひとつあったでしょ。ひょうたんの短冊掛けが」と、イベールさん。

行ってみると……。確かにありました。ゆるやかなくびれの、長ひょうたんの形をした短冊掛け。出会えてよかった!

(557日目∞ 7月16日)

 

※次回558日目は奥田亮「でれろん暮らし」、7月19日(月)にアップ。

559日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、7月20日(火)にアップします。