失敗の数々

by 奥田亮

発芽したヒョウタンの苗

ゴールデンウィークを挟んで久しぶりの投稿です。前回から2週間の間に、ヒョウタンの種はめでたく発芽しました。UFOが7つ、IPUが5つ、百成が4つ。ひと安心です。もう1種類なんだかわからなかった種は、古かったのか結局発芽しませんでした。この中からそれぞれ1苗ずつ定植する予定です。まだ双葉なのでしばらく先になりそうです。余った苗は配ってヒョウタン普及活動に役立てます。さっそくピアノの先生がやる気です。

さて、連休のあいだ時間もあったので、楽器も余裕で完成しているはずだったのですが、結論から言うとまだ出来ていません。サボっていたわけではなくて、わりといいところまでいっていたのですが、最終的に「失敗」が確実になったのでした。てなことで、失敗の数々を順を追ってご披露していきましょう。

前回は、糸巻きをクリアしたところまででした。次の課題は反対側の弦を固定する部分をどうするかということで、色々とやってみましたが(写真1〜4)、低レベルな試行錯誤の繰り返しで、いろいろムダな買い物もしてしまいました。最終的に1ミリ厚のアルミ板を2枚重ねて張り合わせ、弦を通す穴をあけて心棒に固定するということで、なんとかうまくいったように思います。

弦の固定方法試案の数々

最終的にこうなりました

いよいよ弦を通して音を出すところまできました。で、肝心の弦の素材をどうするか、という問題。まずはホームセンターで物色し、みつけたのが「硬質ステンレス線0.4mm」。さっそく糸巻きに通してぐいぐい張力を上げていくと、共鳴皮の曲面に弦が当たって想定通りビヨ〜ンと倍音が気持ちよく響きます。しかも弦長が長いおかげでしょうか、想定外に低い倍音から高い倍音まで電子音的な音が持続します。なかなかいい感じではないですか!

でも、どうも角度によってビヨ〜ンの音がいまひとつ美しくありません。弦の当たる共鳴皮の表面がデコボコしているのがよくないんじゃないかと、サンダーで削って整えることにしました。共鳴皮は元々、裏から削って薄くしたのですが、表からも削って薄くすることで、音がもっとよく鳴るのではという期待もありました。

サンダーで削ると表面がスベスベして気持ちいいので、調子にのって削っていると表面になんか四角い影が出てきました。あらら、裏から付けた梁が透けてきたのでした。触るとペコペコしたところもあります。削り過ぎたようです。そこで、補強のためとムラムラになった表面をきれいにするために金色の塗料を塗ることにしました。

削りすぎました

お腹が金色の何かの生き物みたい

塗装も乾いたので再び弦を張り、どんどん張力を上げていくと、今度は「プチン!」、あらら、弦が切れてしまいました。硬質のステンレス線というのは、一度折れ曲がると元にも戻らなくて、強く引っ張るとそこから切れてしまうのでした。もしかして硬質がダメなら軟質の方がいいのかもしれないと、今度はホームセンターで軟質0.3ミリというのを購入。張ってみると音はわりと悪くない。これでいけるかなと、どんどん弦を巻いて音を上げていくのですが、またすぐに低くなってしまいます。軟質は引っ張るとどんどん伸びてしまうということがわかりました。う〜ん。悩んだ末にやっぱりホンモノのタンブーラの弦を探すことにしました。

昔見たタンブーラの弦はロールになっていたように記憶していたのですが、ネットで売っていたのはタンブーラ用に長さが揃えられていて、この丈の長い楽器には長さが足りないかもしれません。もう少し検索してみると、シタールの弦がロールでありました。しかもステンレス線と銅線の2種類。面白そうなので銅線で3種類の太さを購入しました。届いてビックリ、意外と太い。でも張ってみるととてもいい音がします。やっぱりそれ用に作られたものは、ちゃんとそれ用に考えられているんですね、と今さらながら感心。

シタールの弦

またまた軽い敗北感を抱きながら調子にのって数本弦を張り、少しずつ張力を上げていきました。びょ〜んびょ〜んと倍音を響かせ、4度、5度の和音が怪しげに鳴ります。これはいい感じ。これ、たぶん弾いている人が一番気持ちよくなるタイプの楽器です。でも、やっぱり弦を張っても張ってもすぐに弛み、音が安定しません。なんでかなあ、とよくよくみれば、糸巻きの帽子が弦に引っ張られて傾き、チャップリンの山高帽だったのが、ジュリーの勝手にしやがれのソフト帽になっています。補強のために帽子の下にネジで付けたL字状の木も、弦の張力に堪え兼ねて割れてしまっていました。やっぱり弦の張力を甘くみていたのです。

こんな風に傾いたのでした

ということで、結局弦をすべて取り、糸巻きの帽子も取り外して、糸巻きと弦の固定方法を考え直すことにしました。こうしてみるとボディの一部を金色に塗った単なる長瓢にしか見えません。ああ、一から出直し…、振り出しに戻る。ちょっとじっくり考えます。でれろん。

振り出しに戻る

(508日目∞ 5月10日)

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。