予約必至!行列のできる空也もなか(その1)
by 丸黄うりほ
空也上人といえば、一般的には教科書にも載っている「空也上人立像」を思い浮かべる人が多いと思います。口から六体の仏様が出ているあの像……といえば、「ああ!」と思う人も多いのではないでしょうか。
空也上人は口称念仏の祖。平安時代から江戸時代、明治時代ごろまで貴賎を問わず多くの帰依者が京都だけでなく全国にいて、空也僧とか空也衆などと呼ばれていたことは、以前この日記でも何度か書いたと思います。
そして、空也上人や空也僧が常に携えていたといわれるのが、鹿の角をさした杖と、首から下げた鉦またはひょうたん。ひょうたんを叩きながら念仏を唱えるというのが彼らの信仰のスタイルだった。というわけで、ひょうたん好きにとって空也上人は歴史上の最重要人物のひとりなのです。
前置きが長くなりましたが、私は先々週、東京・銀座の「空也」にようやく行くことができました。実はこの店のことを私が知ったのはつい最近のこと。ネットで「空也」を検索すると、空也上人よりも銀座の「空也」のほうがはるかに多くヒットする。で、記事やブログを読んでみると「常に行列ができている」とか「予約しないと買えない」とか書いてある。また、明治の文豪・夏目漱石が贔屓にしていたことも書かれていました。東京に行くことがあったら、ここはぜひ立ち寄らねば……と思っていたわけなのです。
私は一週間ほど前に「空也もなか」と生菓子の「黄味瓢」、「空也双紙」を電話予約しておきました。
「空也」は銀座の並木通りと呼ばれるところにありました。思っていた以上に間口の狭い小さなお店。確かに行列はできていましたが、このご時世のためかそれほど長くなく、わりあいあっさりと中に入れてもらうことができました。
入ってみて驚いたのは、まったく商品の陳列ケースがないことです。生菓子ともなかの入った紙箱が数個カウンターに載っていましたが、それ以外はほぼ予約用のようで、すでに包装されていました。
お店の入っている建物や、のれん、釣り銭をおくカルトン、包み紙やレジ袋もひょうたんモチーフが使われていてうれしくなりましたが、なにより感激したのはガラスケースの中に鹿の角とひょうたんのついた空也僧の杖が立てかけられていたこと!ずいぶん古そうで、これはきっと謂れのあるものだろうと思いました。
しかし、お店の人はものすごく忙しそうで、とてもそんな話を聞けそうな雰囲気ではありません。後にも次から次からお客さんが来られます。私はお勘定をすませて外へ出ました。
さて。ひょうたんの包み紙のなかの、もなかと生菓子のお味は? 明日に続きます!
(478日目∞ 3月23日)