じいじ & げじげじ
by 奥田亮
すみません。先週、ビシッとしない冬だとかなんとか、生意気なことを書きましたら、急にどかっと降りました、雪が。そしてまたちょっと積もりました。ただ、今頃の季節に降る雪は、けっこう水分を含んでいて、地面に落ちるとすぐに溶けてあまり積もりません。春が近づいた頃に降る水分の多い雪のことを、このあたりでは「かみ雪」と呼びます。南から来た雪のことを指すとか、長野県の中部・南部で降る雪のことを指すとか、諸説あってはっきりしませんし、語源も「かみ」=上方=都=南、という説や、紙のような雪という説など聞きます。
それでも多少は積もりまして、これは雪掻きが必要かなと思いましたが、日中の天気は快晴ですぐに溶けはじめ、雪掻きするほどでもありません。屋根の雪が溶けてポタポタと軒の下に落ちています。まだまだ夜は気温がマイナスになるので、あーこれは地面が凍って危ないよなと思っていたら、実際すでに凍っていて、ご期待通りツルっと滑って尻餅をついてしまいました。ちょっと打ち身が痛いです。幸い大事には至りませんでしたが、へたをすると捻挫や骨折をしかねません。年寄りは特に気をつけないといけませんね。
こんな風に雪が積もったり溶けたりを繰り返すと思い出す楽器があります。「じいじ」(写真3)。これは数年前に栽培したアメリカ瓢(ロングハンドルディッパー)で作ったのですが、ネックがぐんにゃりと歪んで表面もしわしわです。収穫後に水に漬けず、ボディを大きく切りとって中身をほじくり出し、庭の片隅に放置していたため、上に雪が積もり、日中陽に当たって溶け、また積もり、また溶け、と繰り返しているうちにこんな形になってしまったのでした。これはこれで味わい深いものになったので、そのまま口の所に水道用の塩ビの管をつけてディジュリドゥ風の管楽器にしたのでした。
アメリカ瓢は本来ネックが真っ直ぐでボディがぽっこりと丸いきれいな形をしています。じいじと同じ年にできた、大きさも形もよく似た兄弟瓢は、ちゃんと水に浸けて中身を出し、表皮もきれいに取ったので工業製品のような端正な面立ちでした。それでできたのが「げじげじ」(写真4)。これはそのきれいに真っ直ぐなネックに直接高下駄式にフレットを付けた複弦2コースの弦楽器です。
どうしてこんなにも扱いに差ができたのか、思い出せないのですが、生きた実の時はほぼ同じ形だったのが、収穫後にこんなにも見栄えが違って、なんとも言えない感慨があります。とはいえ、楽器としての扱いに差があるかといえばそういうことではなくて、楽器に貴賎なし、どちらもそれぞれに生かす場面があって楽しんでおる次第です。
この「じいじ」と「げじげじ」には後日談がありますが、それはまた来週。でれろん。
(458日目∞ 2月22日)
※459日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、2月24日(水)にアップします。2月23日(火・祝)はお休みをいただきます。