京都のひょうたん寺、節分会は暦に関係なく…?
by 丸黄うりほ
年に一度、節分の日にだけ開門される京都市上京区の「福勝寺」。13世紀からある真言宗の古刹なのですが、通称「ひょうたん寺」と呼ばれることでも知られています。普段は閉ざされて檀家だけしか入れない山門が、この日は一般のお参りもOKということで、出かけてきました。
今年は124年ぶりに2月2日が節分。ということで、間違わないようにカレンダーに印をつけて張り切って行ったのですが……。
千本通を折れて出水通を西へ。このへんのはず……だよな、あれ?山門が閉まっている?
その前で、お参りにきたと思われる人々が数人かたまってお話されていたので訊いてみると、「せっかく来たのに明日らしい。裏門は開けてくれたはりますよ」とのこと。えええーっ!
裏門へ行ってみると張り紙がありました。
「お知らせ 当院の節分会は暦に関係なく毎年二月三日とさせて頂いております 住職」
なんと……。張り紙の横には「ひょうたん寺」と書いた表札もあり、よくみると「う」が右へ飛び出しているという面白い書き方だったのですが、このときは頭に血が上ってしまっていて、あとで写真を見て気づきました……。
しかし、私の後にも今日だと思っていたという人がぞくぞくとやって来られます。ほとんどが常連の人らしく、「なんで知らせてくれへんの?」と言ってる人もいました。で、みなさんハガキのような紙を持ってこられてる。受付の方が、それと引き換えに袋に入った「ひょうたん守り」を渡していました。
そうです、このお寺が「ひょうたん寺」と呼ばれているのは、この「ひょうたん守り」のため。正式には「宝珠尊融通御守」といいます。なぜひょうたんなのかというと、如意宝珠を2つ重ねた形に似ているからとか、豊臣秀吉がひょうたんを奉納したからとか、いろんな説があるようです。ご利益は絶大で、金銀財宝に恵まれるだけでなく、貧苦が福徳に、七難が七福に転ずるというものらしい。
私は、お守りを受け取られた方に話しかけてみました。
「あの……、いつも、来られているんですか?」
「ひょうたんは蔓物やろ。蔓物は切らしたらあかんていうから、毎年来てる。もう30年、いや40年以上来てるかな。今は1万円もするけど、その頃は700円やったんや。それで、人気があってこの門から向こうのほうまでずらーっと列ができてた。みんな待っているのが寒いから、コーヒー売りまで来てた」
「すごい価格差ですけど、その頃と今とお守りの見た目は?」
「まったく一緒や。でも、いつもみたいに開門してたら、自分で好きなひょうたんを選べるんやけどな、形のええやつを。今年は当てがいぶちや」
「まあ、1日早くても受け取れたからよかったですよね。今年のひょうたん、どんな形か、見せていただくことはできますか?」
「ええよ」
というわけで、見せていただいたのが3枚目の写真です。10センチほどの千成ひょうたんに「福壽圓満御守護」と書かれた黄色のお札。金色の紐も結ばれています。赤い紐で玄関などに吊るしておくのだそうです。
「今年は間違えていっぱい人が来はるから、ひょうたん守り欲しかったらあげますよ」と、受付の人が私にも声をかけてくださったのですが、まあ今年は縁がなかったということであきらめました。そして、かわりに横にあった「山本容子×福勝寺コラボ・エコバッグ」を買いました。
正式なお参りは来年の節分までお預け。同日に北野天満宮で行われる予定だった、ひょうたんが出てくる「北野追儺狂言」もコロナ禍で中止になったので、それもあわせて、楽しみが一年先に伸びたと思うことにしましょう。
(447日目∞ 2月4日)