虎屋吉末の「ひょうたんせんべい」

by 丸黄うりほ 

▲神戸の老舗御菓子司、虎屋吉末の「ひょうたんせんべい」

▲大小いろいろ、素晴らしい形のひょうたん6つ!

 

きょうご紹介するひょうたんなお菓子は、神戸の御影にある老舗御菓子司・虎屋吉末の「ひょうたんせんべい」です。

パッケージには緑色をした涼しげなひょうたんが5つ。箱を開けると、2枚入り6袋(12枚)のせんべいが入っています。

2枚目の写真を見てください。一枚一枚、丁寧に焼かれたせんべいには、それぞれ6つのひょうたんが焼き付けられています。このひょうたんたちの形が、私は大好きなんです。

ひょうたんは6つ揃うと「無病(六瓢)息災」につながり縁起が良いということで、ここでも健康長寿を願う吉祥意匠として採用されたようです。しかし、こちらの六瓢は、ひょうたんをただ6つ並べただけの図案とは違います。

真ん中に形のいい百成ひょうたん。その右には少し長めの品のいいひょうたん。左上には下半身の大きな面白いひょうたん。その後ろには立派な大ひょうたんが並び、後ろには長ひょうたんがこちらを向いている。そして、いちばん下には縁の下の力持ちのような、下半身のながーい曲がりひょうたんが……。

どのひょうたんも、本当にいい形をしています。この図案を描いた人は、実物のひょうたんをよく知っている。もっといえば、おそらくひょうたんが好きである。ひょうたんのことをあまり知らない人がイメージだけで描いた絵とは決定的に違う。それが、こちらにもビンビンと伝わってくるのです。

左端に「山日住人」と読める篆刻印がありますが、これが画家のお名前でしょうか?ネットで調べてみたのですが、どうもよくわかりませんでした。

この「ひょうたんせんべい」、お味の方は正統派の卵せんべいです。軽い口当たりと優しい甘さで、子どもからお年寄りまで誰にでも好まれそう。

ちなみに、この「ひょうたんせんべい」を買うことができるのは、神戸・御影の虎屋吉末だけです。ネットでお取り寄せもできるようですが、百貨店などには出店されていないようです。

虎屋吉末は、江戸時代の廻船問屋を経て、享和元年(1801年)にこの土地で開業された老舗。当時は西国浜街道に面し、灘五郷の中程にあったそうです。それにちなんで灘五郷の醸造元の銘を刻した卵せんべい「樽型煎餅」が看板商品。残念なことに、旧店舗は阪神大震災で全壊してしまったそうですが、当時の写真がネットに残っていて、それはそれは情緒のある、時代劇に出てきそうな素敵な店構えでした。阪神御影のあたりは、先の震災で最も風景が変わってしまった地域の一つだと思います。

虎屋吉末さん、「ひょうたんせんべい」を21世紀に残してくださって、本当にありがとうございます!

(438日目∞ 1月22日)

虎屋吉末はこちらから

  

※次回439日目は奥田亮「でれろん暮らし」、1月25日(月)にアップ。

440日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、1月26日(火)にアップします。