日本玩具博物館のひょうたん(1)マテ・ブリラード
by 丸黄うりほ
「花形文化通信」のインタビュー記事でただいま公開中の「日本玩具博物館」学芸員・尾崎織女さんのお話、みなさん楽しんでいただいていますか? 人の営みの一つである玩具の世界の奥深さに、取材を担当させていただいた私自身も驚き、感心し、同時に心がぽかぽか温まるよう。
尾崎さんによると、世界にはひょうたんでつくられた玩具がたくさんあるそうです。
ということで、こちら「ひょうたん日記」でも今日から3日間、「日本玩具博物館」で見せてもらったひょうたん製の玩具を紹介していきますね!
まず最初に見ていただきたいのは、「マテ・ブリラード」と呼ばれるペルーの伝統的なひょうたん細工です。マテとはペルーの言葉でひょうたんの意味で、ブリラードとは彫刻のこと。なんと紀元前からあるアートなのだとか。
写真1枚目は、尾崎さんの著書『世界の民芸玩具 日本玩具博物館コレクション』(大福書林)にも登場している「マテ・ブリラード」の人形です。ボーリングのピンのような形をしたなで肩ひょうたんに、民族衣装も帽子も黒いつぶらな瞳もとてもかわいい!下半身にアンデスの暮らしの風景が刻み込まれているのも楽しいですね。
「マテ・ブリラード」は、天日干ししたひょうたんの地色を基本に、炭で焼いたり炙ったりして作った黒っぽい色と、彫刻刀で刻みを入れた白っぽい色とで線画を巧みに表現しています。灰をかけて白色をくっきりさせる技法や、油と灰をまぜたものを表面に塗って洗いにかける技法もあるようです。
2枚目と3枚目の写真も「マテ・ブリラード」の動物です。面白い顔をしていますが、これはいったい何か分かりますか?
……回答。アルマジロなんだそうです。ペルーではおなじみの動物で、敵に出会うとこんなふうにくるんと丸まってボール状になり、身を守る性質をもっているらしいですよ。
ところで、このひょうたんの形、「ひょうたん日記」を続けて読んでくださっている方なら、「あ!あれに似てる!」と気づかれたのではないでしょうか。そうです、ここにたびたび登場しているひょうたんUFOです(10月6日の日記「ひょうたんUFOと中秋の名月」)。直径20センチほどで、大きさもだいたい同じ。こんなところでまた出会うとは、UFOはもともとアメリカ大陸からやってきた品種なのかもしれませんね。
4枚目の写真のトリは、上の二つとは少し違う技法で作られているように見えます。目や身体に入っている赤は彩色されているのでしょうか? クチバシと足は木で作られているのかな?
いずれにしても、個々のひょうたんの形にインスピレーションを得て人形や動物に形作られ、まったく同じものは二つとないのが魅力です。「マテ・ブリラード」によって新たな命を吹き込まれたひょうたんたちは幸せですね。
(405日目∞ 12月1日)
丸黄うりほ ライター・編集者。ひょうたんをタネから育て、その実から音の出るものを自作し、演奏する楽団「ヒョウタン総合研究所」立ち上げ所員。ソロで「オール電化ひょうたん」としても活動中。ひょうたん栽培歴は15年ほどになるが、畑がないので毎年マンションのベランダでプランター栽培している。「花形文化通信」では、ほかにインタビュー記事を担当。
ふじっこさん 「ヒョウタン総合研究所」所員。ひょうたん栽培2年生。今年は自宅の庭と畑で6品種6苗のひょうたん栽培に挑む。そのようすを丸黄への報告と写真提供でリモートひょうたん活動中。