ひょうたんな街・長浜(15)ひょうたんなお菓子を探して
by 丸黄うりほ
長らくおつきあいいただいた「ひょうたんな街・長浜」レポートもいよいよ終盤。今週は、長浜で買い求めたお菓子とお酒について書いていきます。
とはいえ、いきなり残念な報告があるのです。それは、今回の長浜行きで絶対に買って帰ろうと決めていた「豊公もなか」が、まぼろしとなってしまったこと……。
「豊公もなか」は、「長浜 和菓子」で検索すると上位に出てくるお菓子です。つぶあん入りとゆずあん入りがあり、もなかの皮には千成ひょうたんがぷっくりと浮き出し、包み紙にもかわいいひょうたんの絵が描かれているのです。
このもなかを製造販売しているのは、「丸㐂屋」という和菓子店。映画の寅さんのロケにも使われたという風情のある店構えに加え、ネットでも「上品な大人向きの味」とか「工夫が凝らされていて、ここのお菓子はどれもおいしい」との高評価。「マルキヤ」という店名にも「丸黄うりほ」を名乗る自分とのシンパシーを勝手に感じていたのですが……。
お店があったはずの場所に行ってみるとガラス戸が閉まり、中を覗き込むと陳列棚などもすべて撤去された後でした。ひょうたん型をした木製の看板だけが寂しく残されています。斜向かいにも同じひょうたん型の看板が出ていて、そちらの家屋はどうやら製造所だったよう。まだ小麦粉の袋が置いてありました。閉店されてからそんなに時間はたっていないと思います。もしかしたらコロナ禍のせいなのかもしれません。
ふじっこさんと私は「丸㐂屋」の思いがけない閉店に肩を落としつつ、なおもひょうたんを探して街を歩きました。すると……。
「本家 堅ボーロ」というアンティークな看板と、レトロなどという言葉が生易しく感じられる古い店舗が目に飛び込んできました。
「おお、ここがあの有名な堅ボーロの本店か」と思いましたが、「生姜味のお菓子だよね、ひょうたんには関係ないよね」「でも、せっかくだから入ってみようか」ということになり、私たちは吸い込まれるようにお店の中へ。
そして見つけたのが、「堅ボーロ」のパッケージです。贈答用の箱にも、普及版のビニールパッケージにも、しっかりとひょうたんが印刷されていました。
「さすがは長浜!」と二人でぎゃあぎゃあ騒いでいると、お店の人がすっと出てきて商品の説明をしてくださいました。「堅ボーロ」はパンの生地を二度焼きして作ったお菓子で、日持ちがするため、戦時中は保存食として戦地で重宝されていたそうです。宮内庁御用達でもあるそうで、皇室の方々や宮内庁に献上されたというひょうたん型の箱入り商品の写真も飾られていました。
めちゃくちゃかわいい。この箱入りがあったら私も欲しい。……と思いましたが、実際に買い求めることができたのはビニールパッケージの生姜味といちご味。私たちは次なるひょうたんなお菓子を探しに、再び街へと足を踏み出したのでした。
(396日目∞ 11月17日)