空也上人とひょうたんをめぐる謎
by 丸黄うりほ
今年6月、私は京都東山の六波羅蜜寺に参ってきました。その時期に花形文化通信でインタビューさせてもらった鈴木創士さんが「六波羅蜜寺のあたりは怖い」とおっしゃっていたからです。私は怖いといわれると近寄りたくなるあまのじゃく。
そして、もうひとつは平安時代の僧・空也上人への興味です。六波羅蜜寺は空也上人が活動拠点にしていたといわれる寺。教科書にも載っていて重要文化財にも指定されている、口から六体の仏様が吐き出されている、あの「空也上人立像」も所蔵しています。
空也上人は、辻説法や口誦念仏をはじめたと伝えられている人物。その念仏がやがて踊念仏や六斎念仏となっていったといわれています。
全国に広がっていった踊念仏や六斎念仏では、鉦や太鼓のほかに、ひょうたんが打ち鳴らされる場合も多い。また、その影響を受けて広まり、中世や近世の京都にたくさんいた鉢叩きといわれる人々も、ひょうたんを打ち鳴らして茶筅を売り歩いていたといわれています。
そんなわけで、六波羅蜜寺に行けば、なにかひょうたんに関連のあるものが見つかるのではないかと思ったのです。
結果から言いますと、6月にお参りしたときには何も見つけられませんでした。宝物館で「空也上人立像」を見せていただいたのですが、上人が首から下げてらしたのはひょうたんではなく鉦でした。ほかにも平清盛像など高度な技術で彫刻された人物像や仏像が多数あって、美術鑑賞としては眼福でしたがひょうたんは見つからず。お守りなど授与していただけるものにも、特に目を引くひょうたんモチーフのものは見つけることができませんでした。
しかし……。だいたい「空也」という名前からして、「空っぽ」、「うつろ」とひょうたんを連想させると思いませんか。しかも、踊念仏では「うつろ」であるひょうたんや、鉢、つまり「うつわ」を「打つ」のですよ、ウツをウツ。
ひょうたんと空也上人を結ぶもの。何か日本人の精神や芸能の深いところ、とても大切なものにつながっているような気がしてなりません。
その後も私はネットを検索したり、本を読んだりして何かヒントはないかなと密かに調べ続けていました。すると、11月に「空也忌」が中京区の「空也堂」で行われるという情報をみつけることができたのです。ぜひ行ってみたい。このときに何か明らかになることがあるかもしれません。また、この日記でもお知らせしていきたいと思います。
(375日目∞ 10月16日)
※次回376日目は奥田亮「でれろん暮らし」、10月19日(月)にアップ。
377日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、10月20日(火)にアップします。