瓢縁奇也哉

by 奥田亮

ユカリさんのひょうたん(イプ)畑 単管パイプで頑丈につくられている。

大小20個ぐらいできたようです。

10月に入りました。こちら長野県小布施町も朝方は10℃を切る日もあり、少々肌寒くなってきました。それでも日中は汗ばむほど暖かくなることもあり、この温暖差が果実をおいしくするようです。

町は栗や果物を求めるお客さまで賑わっています。町の喧噪からすこし離れたところにあるわが古本屋スワロー亭は、そんな中でもいつもどおりに静かなので、果物やお菓子の袋を持ったお客さまが、ホッとした表情で本をご覧になっていたりします。クールダウンには本屋が最適ですね。

先日、町内で「マルテ珈琲焙煎所」をご夫婦で営んでおられるユウコさんが来られました。ユウコさんはフラの達人で、お仕事の傍らフラダンスを教えておられるのですが、生徒さんのユカリさんが今年、なんとイプ(ハワイのヒョウタン)を栽培されたとのこと。ただ、ヒョウタン栽培は初めてなので教えてほしいとのことでユカリさんと一緒に来られたのでした。写真を拝見すると広大な畑に単管パイプで頑丈な棚を作って栽培されています。そして、くびれの少ない大きな実が20個以上ぶら下がっています。ひゃーこれはすごい。

なんでも、できた実でフラに使うイプ(打楽器)を作りたいということでした。ハワイ語でヒョウタンのことをイプといいますが、そのまま楽器の名前にもなっているのです。イプにはダンスの時に手に持つ小ぶりのものと、伴奏用に使う大きなイプへケがあるようです。イプへケは、くびれの少ない大きなイプの上に小さなイプを接合したもので、地面にドンと叩きつけてリズムを刻みます。ネットでいろいろ調べた結果、栽培されたイプはくびれのない雫型の形状から、イプへケの下の部分に使われるイプではないかと思われます。

ユカリさんに収穫の注意点とその後の中身出しの苦行についてお伝えしたところ、若干怯まれたか、いくつか実をもらってほしいとのこと。こちらも一瞬怯みましたが、口が勝手に「ヨロこんで」と即答していました。

でれろん暮らし連載・その7」でお伝えしたように、今年はヒョウタンの栽培をしていません。なので、今年の秋はアノ中身出しの苦行がなくて安穏だなあと思っていたのですが、ひょうたんの神様はそれをお許しくださらなかったのです。しかもよく考えてみると、今年栽培がなくなったのは、春に家に保管してあったイプの種が発芽しなかったから、だったのに、秋になって結局イプの実が手元に来てしまったのは、偶然とはいえ不思議な力を感じなくもないのでした。

くびれの少ない雫型のヒョウタン。

数日後、大きなイプを4つ携えてお二人が来られました。ということでいよいよ今年も水漬け〜中身出し作業が始まりました。翌日、穴をあけてさっそく水に浸けました。

ポリバケツを連結し、下に水道の蛇口を取り付けたヒョウタン水漬け専用器。

水漬け。どうなりますことやら。

これからまた、楽器のイプが出来上がるまで、ユカリさんとユウコさんに伴走していくことになりそうです。嗚呼、瓢縁奇也哉、でれろん、でれろん。

(366日目∞ 10月5日)