路地裏の明日香美人?

by 丸黄うりほ

▲こんなところに?路地裏で思いがけなく出会いました

 

先日、親戚のお墓まいりをしました。親戚といっても父の叔母にあたる人で、昨年ずいぶん高齢で大往生されたのですが、私自身は生前には何度かあったきりでした。墓所の近くに住まいがあり、従姉妹たちによると、ものすごく古い路地裏の長屋に住み続けていたらしい。今はもう空き家になっているということで、帰りに立ち寄ってみることにしました。

その家の表通りに面した玄関はあとから拵えたもので、本来の玄関は人がやっとひとり通れるか通れないかぐらいの本当に狭い路地を何度も何度もカクカクと折れ曲がった末に、やっとたどり着くというところでした。これは想像以上にややこしい路地だ、今だったらこんな道は絶対につくれないだろう、おそらく消防法に引っかかるだろう。そう思いながら従姉妹たちの後ろをついていった途中に……。

えっ、こんなところに?

私は、ぶらりとぶら下がる、薄緑色の細長い実に出会ってしまったのです。

ヘチマだろうか?最初はそう思いました。実の形と大きさはちょうどヘチマくらい。ですが、茂りまくった葉の間からのぞいている雄花のつぼみの色は白色です。ヘチマの花は黄色。花が白いということは……ひょうたんだろうか?

そう思ったとたんに、私に「ひょうたんスイッチ」が入りました。そのおうちの中をそーっとのぞきこんでみると、だいたい6畳くらいの庭があり、その全面に棚が作ってあって、蔓と葉がわさわさと茂りまくっていました。白い花もいっぱいついています。昼間だったので、ほとんどはしぼんで茶色くなっていましたが。ヘチマのように見えた細長い実も、棚からいくつもいくつもぶら下がっていました。

「何してるのー!」遠くから従姉妹の声が聞こえます。「いや、ひょうたんが」と私は小さい声で答えました。この家の住民に、「これはひょうたんですか?品種はなんですか?」と聞いてみたい気持ちがむくむく起こってきました……。しかし、人の気配はありません。空き家ではない感じでしたが、この蔓の状態を見ると摘心などもしていない。茂らせ放題。それにしては9月なのに青々としていて、元気いっぱいです。

とりあえず写真を1枚だけ撮らせてもらい、私は従姉妹たちの後を追いかけました。追いかけながら、あれはもしかしたら明日香美人だろうか?と思いました。明日香美人というのは、やや短めの長ひょうたんの品種名なのです。もしも明日香美人だとしたら、育て主はひょうたんマニアに違いない。特殊ルートでしかタネや苗を入手できない品種なのです。

従姉妹たちの手前、私はそれ以上その場所で観察を続けることはできず、自宅に帰ってから撮らせてもらった写真をよくよく観察してみました。

明日香美人にしてはくびれがなさすぎる。これは、おそらく長ユウガオだろう、と結論しました。思いがけない出会いに、「大叔母さんありがとう」と心の中で唱えながら。

(363日目∞ 9月30日)