ひょうたんの花の香りについて

by 丸黄うりほ

▲花びらが大きく、香りのいい雄花

▲雌花は花びらが小さく、香りも控えめ

▲受粉のために解体された雄花たち

 

ひょうたんのにおい、というと大きく分けて三種類あります。

一つ目はこの日記でも何度か書いてきた、悪名高き「水浸けのにおい」。ひょうたんの実は、受粉してから完熟するまで約60日かかります。完熟した実を収穫したら、その上部(口の部分)または下部に穴をあけて、その状態で2週間ほど水に浸けて中身を腐らし、液状になったワタとタネを振り出してからっぽにする。そして、外皮だけにしたひょうたんを乾燥させて、楽器やいろんなものの入れ物になる空洞のひょうたんが出来上がるのです。

ひょうたんの実を水浸けにした時に発生するにおいは、それはもうすさまじいもので、まあ腐っているにおいですから当たり前ではあるのですが、このにおいの印象が強烈すぎて、ひょうたんといえばクサイものという汚名を着せられているような気もします。

でも、ひょうたんのにおいはそれだけではありません。

においを言葉で言い表すのはとても難しいのですが、きょうは頑張って説明をしてみようと思います。

二つ目のにおいは、ひょうたんの葉のにおいです。葉なので、まず青臭い。雑草なんかを引き抜いた時に鼻に感じる、植物らしいにおいがベースにあります。そこに独特の生臭さが混ざっています。近いのはドクダミ。それからスリゴマのにおい。タンパク質とかアミノ酸っぽさとでもいえるでしょうか? 葉の表面と指が擦れ合ったとき、このにおいが「うっ」ときます。正直いうと、私はこのにおいはあまり好きではありません。

葉のにおいはそんな感じでイマイチなんですが、それを補ってあまりあるほど素晴らしいのが、じつは花の香りなのです。

これも何度もこの日記で書いてきたので、みなさんももうご存知だと思うのですが、ひょうたんの花は夕方に開いて、翌朝にはしぼんでしまう、一夜限りの花です。雄花と雌花があり、同じ日に咲き揃わないと受粉することができません。花の色は白一色。ひょうたんには、ほかの色の花はありません。

9月に入ってから我が家のひょうたんはものすごい花ラッシュが続いているのですが、いちめん白い花だらけで、夢でみた花園みたいだなぁと思った先週末の夕暮れ時のこと。

薄暮の空、折からの風にふわっと乗って、鼻に感じた花の香り。それはそれは絶品でした。高級な香水やエッセンシャルオイルでもこの香りにはかなわないのではないだろうか。そう思わせるほどに。

どんな香りなのかというと、ジャスミン、スズラン、ユリなどの白い花が思い浮かびますが、そのどれよりも淡くて上品。そして、みずみずしい。強烈な自己主張はないけれど、地味なわけではない。この香りをもし香水にできたら、清潔かつ大人っぽい上質なファッションにぴったりハマると思います。

このにおいを発散しているのは花びらの部分で、そのせいか、花びらが大きい雄花のほうが雌花よりも香りが高い。受粉するために分解してみたら、花びら1枚でもすごくいい香りがしました。

真ん中の雄しべの部分はナッツのような香りです。ここだけを嗅いでみると全然違うにおいだったので、改めて驚きました。

(362日目∞ 9月29日)