ひょうたんへの忖度なのだろうか?
by 丸黄うりほ
毎年、今頃の季節になると一度は見かけるニュースに「ひょうたんを間違って食べてしまって、食中毒」というのがあります。この日記でも何度か書いているのですが、ひょうたんには毒があります。食べると消化器系がやられるようで、死亡例もあるほど。その毒の正体はククルビタシンという苦味成分です。
品種改良によって苦味成分を取り除いた食用ひょうたん以外は、食べてはいけません。ここは強調して言っておきますね。
先日ニュースで、ユウガオを食べた人が食中毒になり、入院したというニュースを見かけました。そのユウガオに強い苦味を感じ、30分後に嘔吐や下痢などの症状が出たのだそうです。ニュースでは、ククルビタシンについても言及してありましたが、「観賞用のウリ科植物に含まれる苦味成分で、ごくまれに食用のユウガオにも含まれている場合があり」と書かれているのが気になりました。
この記事は別に間違っていないのですが、「観賞用のウリ科植物」という言い方で、ひょうたんと明言するのを避けている感じがしたのです。
この記事のコメント欄はものすごく賑わっていて、「そういえばあの時食べたユウガオが苦かった」とか「ズッキーニが苦かった」とか「メロンが」「ゴーヤが」などいっぱい書き込まれていました。この中で、ゴーヤの苦味だけは別で毒性はないのですが、他のはすべてククルビタシンです。
この記事のことを『花形文化通信』の編集長の塚村さんに伝えたら、厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」というサイトのリンクを教えてくださいました。このサイトに「植物性自然毒」というリストがあり、そのなかに「ユウガオ」がありました。しかし、ひょうたんはありません。アジサイやスイセンなど食用でないものもリストに挙がっているのに。
「ユウガオ」項目の概要版をあけると、和名「フクベ、カンピョウ、チブル」、英名「Bottle gourd」と書かれているのですが、ヒョウタンとは書かれていない。詳細版のほうには「観賞用に栽培されるヒョウタンとは同一種であり、ヒョウタンの苦味(ククルビタシン類)の少ない品種が食用のものとして選別されたのがユウガオである」と書かれていて、間違えやすい植物として「ヒョウタン」とありました。
塚村さんは学名を調べるのに使う「ylist」も検索してくださったようで、そこでは和名として「ヒョウタン」と「センナリヒョウタン」が出てきたので俗名ではない。記者ハンドブックの用語辞典にも「植物のヒョウタンはカタカナ表記」と書かれているから堂々とつかっていい言葉のはず、と。
……とすれば、なんなんでしょう?この記事やサイトの、ひょうたんに対する忖度は……。「あくまで気をつけて欲しいのは苦味のあるユウガオでありまして……」という言い訳が聞こえてくる感じです。
ひょうたんは意外と「偉い植物」なのかもしれませんね。
(312日目∞ 7月14日)