闇に隠れて生きるひょうたんベムベラベロ
by 丸黄うりほ
我が家のひょうたん「ティトゥス」は、ローマ皇帝のようにベランダに君臨しています。育て主の私は、毎日せっせと水をやり、肥料をやり、剪定し、「きょうもきれいですね」と蔓や花にお世辞まで言い……。過保護じゃないかと言われることもあるんですが、ひょうたんは過保護にしないとあかんのです。なんといっても世界最古の園芸植物の一つでありまして、古くから人間の手が入ってこそ、絶滅せず今日まできた。動物でいうと犬や猫のようなもので、野に放つと生き延びられないのです。
そんなひょうたんの苗を、なんと残酷にも野に放ったふじっこさん。そのいきさつについては、299日目(6月25日)の日記を参照していただきたいのですが。かわいそうだけど、この場合はまあ仕方がないか……と私も思っていました。それに、野生では生きられない植物であるひょうたんが、そのような仕打ちを受けて、どこまでもつのか。どのように環境に適応しようとするのかを、一度見てみたいという好奇心もちょっぴりありました。
野に放たれたひょうたん3苗は、漫画好きのふじっこさんによって「ベム」「ベラ」「ベロ」と名付けられました。闇に隠れて生きる!まさに野良ひょうたんたちにぴったりのネーミングです。
一週間以上たって、どうしているのかな、もう死んでるかなー? と思ったら、まだ生きていました。意外としぶといです。しかし、最新の写真を見る限りでは3苗とも息も絶え絶え。
「ベム」と名付けられた苗は、葉に白いカビが生える、うどんこ病に冒されていました。しかし、よく見るとちょろりとした巻きひげまで出ている。この3苗のなかではいちばん元気。なかなかたくましいですね。
「ベラ」は葉が黄色くなり、茎も黄色くなって、くたっとしています。周囲の雑草たちが、死にかけの老婆を心配そうに見守ってくれている感じです。あと何日もつでしょうか……(涙)。
「ベム」は葉を虫に食われてしまったようで、ほとんどボウズになっていました。ですが、中心の新しい葉が残っているので「ベラ」よりは長くもつかもしれません。近くのツヤツヤした緑の雑草たちに、「やーいやーい弱虫!」とからかわれているようで、かわいそうになってきます……(涙)。
皇帝として大切にされるのも運命なら、妖怪人間として闇に隠れて生きるのも運命。はやくひょうたんになりたい!という叫び声が野にこだましています……。
(309日目∞ 7月9日)