ひょうたんが出てくる七夕物語
by 丸黄うりほ
きょうは七夕ですね。
夕方に花開いて翌朝には枯れてしまうひょうたんの花。同じ夜に咲かないと実になることができない雌花と雄花の運命を見ていると、まるでおりひめとひこぼしのようだと思います。ひょうたんは夏の花ですし、もしかしたら七夕とひょうたんって関係があるのでは?
そんなことをぼんやり思っていたら、なんと、ひょうたんが登場する七夕物語があることを知りました。
七夕物語はもともとは中国の伝説です。夏の大三角形を構成する3つの星のうちの2つ、わし座α星アルタイルが牽牛星(ひこぼし)で、こと座α星ベガが織女星(おりひめ)だということはみなさんご存知ですよね。そして、アルタイルとベガの間には天の川が流れている。
この物語が世界中に伝わって、いろんなバリエーションが生まれました。日本でも地方によっていろんな話になって伝わっているようですが、ここで紹介したいのは『御伽草子』に収められている「天稚彦草紙」です。
この物語では、ひこぼしに当たるのが天稚彦で、おりひめに当たるのが長者の末娘。天稚彦はアメノワカヒコ、つまり『古事記』や『日本書紀』にも出てくる神様なんですが、最初は恐ろしい蛇として現れ、長者に娘をくださいという。差し出される女性のほうは人間、しかも一般女性なんです。
最初から身分違い。無理な設定でのスタートです。ですが、なんと蛇は変身して美しい貴公子となり、娘も彼にすっかり惚れてしまう。
あるとき天稚彦は、急用ができて天に帰らなければならなくなります。で、「西の京に、一夜杓(いちやひさご)というのをもっている女がいるので、それを譲り受ければあなたも天までのぼってこれます」と言うんですね。
いちやひさご!ひさごとは、ひょうたんのこと!
やがて、娘はその一夜杓を手に入れ、ひょうたんに乗って天にのぼっていくことになるのです!
『いまは昔 むかしは今1 瓜と龍蛇』(福音館書店)という本には、サントリー美術館蔵の絵巻『たなばた』と、ベルリン国立東洋博物館蔵の絵巻『天稚彦草紙』がオールカラーのグラビアで掲載されています。娘がそれにのって天にのぼっていくという一夜杓は、白い花がいっぱい咲いているひょうたんの蔓として描かれています。
ついでに言うと、この『いまは昔 むかしは今1 瓜と龍蛇』は、日本中世史の大家・網野善彦と、美術史の大西廣と、国文学者の佐竹昭広の共著。三人の学者が本気を出して作った、大げさでなく奇跡のような、大判で分厚いジュニア向けの本です。ひょうたん関連の図版、物語、トピックスも満載で、めくるだけで楽しい。図書館などで見かけたらぜひ手にとって見てくださいね。
(307日目∞ 7月7日)