後ろ姿にぐっとくる

by 奥田亮

図:おそらく一番はじめに作った楽器。すぐに壊れた。

写真1:次に作った楽器(全体像)。長らく捨て置かれていたので、いろいろなくなったり壊れたりしている。

写真2:糸巻きのところは「壺」の字。

写真3:この後ろ姿にぐっときますっ。

 

2016年から自宅の一角で古本屋を開いているのですが、今年に入ってちょっと大掛かりな改装工事をしました。4月に工事は終わりましたが、この「自粛」状況で急いで再オープンもできないので、ゆっくりと準備を進めていました。

ちょっとしたものは自分で作ろう、ということでゴールデンウィークはDIYに勤しんでおりました。オーディオ機器を置くための棚というか台を作ったのですが、ぐらぐらで使いものになりません。何度かやり直してようやく完成。人気のいぬんこさんの絵はがき用に、流木に切り込みを入れて作ったはがきホルダーも、すぐにはがきが落ちたりでとっても不安定。アイデアはよかったのですが、もう一度やり直しになりそうです。

ヒョウタンで楽器を作ったりしていると、「手先が器用なんですね」と言われることがあるのですが、じつは全くそんなことはないのです。絵柄の細かいハンコを彫ったりは意外とできるのですが、直線や直角に弱いというか、寸法を測ってビシっと作るのは大の苦手。楽器づくりも何度も失敗しないと完成になりません。

演奏中や運搬中に壊れることはあたりまえ。ライブには接着剤やガムテープなど修理道具が必携です。なんというか、むしろ壊れるのを楽しんでるようなところもあるような……。

図は、一番最初に作った楽器です。何かと交ざってフラスコ形になった百成の頭にY字の枝を差し込み、弦を何本か張ったもので、見るからに無理矢理感があって、どうみてもすぐに壊れそうです。で、案の定、速攻壊れました。弦の張力ってすごいんやということと、ヒョウタンって弱いんや、ということがわかりました。

そこで次はちゃんと作ろうと気合いを入れて作ったのが、写真1の楽器です。リベンジということもあって、ちゃんと図面も引いて、ちゃんと測ってがんばりました。全長46センチ、ヒョウタン16センチの小さな楽器ながら、三味線の弦で複弦3コース(写真は現状で単弦)。糸巻きの部分は、漢字の「壺」の字を彫り出しています(写真2)。

けっこう攻めてますね。愛着があってよく弾いたのですが、音はよくありませんでした。天板が厚すぎたし、太い弦を鳴らすだけの空間が足りなかったのです。弦を集めたカナメの所も、割れてきてしまいました。写真をひと目ご覧いただければ、この楽器のキモは後ろ姿にあるとわかると思いますが(写真3)、長くなるので説明は省略。

弦楽器は、弦の張力に耐える構造と、弦を響かせるだけの大きさの空洞が必要、というか、それさえ条件を満たせば音は出る、ということをこの二つの楽器から学んだわけですが、そうとわかれば、いかに手を抜くか、いかに適当に作るかが基本方針になっていきました。生来めんどくさがりの行き当たりばったりなので、そのようにしかできないとも言えるのですが。

きっちり作り終えずに制作途中で見切り発車的に弾きはじめてしまい、そのまま使い続けている楽器がたくさんあります。弾きながら調整・改良・修理して、だんだん体になじませていくという作戦です。たまに、楽器を売ってほしいとか作ってほしいとか言われることがあるのですが、このような成り立ちの楽器のため、商品として責任の持てるものにはなりません。そのような方にはタネをお渡しして、これで作ってくださいと言ってお茶を濁しています。

ただ、ほとんど唯一、依頼されて作った楽器がありました。そのことはまた。でれろん!

(271日目∞ 5月18日)