「自家採種の楽しみ」
by 奥田亮
さて、遅ればせながらうちもそろそろタネまき、苗植えを始めようかな〜。気持ちが定まらないままに野菜とともに、ヒョウタンも一苗だけやってみようかと思いはじめました。
品種は丸黄さんもチャレンジされるハワイの「イプ」。ハワイ語でヒョウタンを意味するイプ(ipu)はまた、フラで使われるヒョウタン製の打楽器の名前でもあります。このイプ、皮が肉厚で硬く、明らかに日本のヒョウタンと組成が違います。もう10年以上前に植えた実から採ったタネなので、うまく発芽するかどうかわかりませんが。
ヒョウタン栽培を始めた頃、タネや苗は毎年、園芸店やホームセンターで買っていました。栽培後に中身を腐らせて出したタネは使えないものと、勝手に考えて捨てていたのです。ところがある時、「いや、そのタネでいいんだよ」と聞き、それ以来、収穫後のタネは乾かして保存するようになりました。発芽率は年を経る毎に下がり、ひとつも発芽しなかった年もあるので、いつもうまくいくとは限りませんが。
信州に住んでから始めた野菜の栽培でも、前年に収穫した野菜から採種したタネを使うことがあります。農家や家庭菜園をしている人からは笑われそうですが、収穫した実から採り出したタネが芽を出し、茎が伸び、花が咲き、また実をつけるというあたりまえのことが、消費社会どっぷりの都会育ちには感動的でした。逆にそんなことに感動するほど、生き物としての感覚が麻痺していることに気づかされます。イモ類や豆、トウモロコシなども、食べ切らずに少し残しておき、季節が来ると土に植えます。これは食育としてもとても有益で、命の循環を学ぶのにも最適だと思うのです。
それができなくなるという状況になるかもしれない、と町の農家さんから聞きました。種苗法が改定され、登録品種のタネの自家採種が「原則自由」から「原則禁止」になるというのです。違反したら10年以下の懲役か1000万以下の罰金とか! 自分のような家庭菜園レベルなら大丈夫のようですが、農家にとっては死活問題。多くの作物が品種登録されているからです。接ぎ木もダメとかで、町の果樹農家も影響甚大とのこと。 あ〜、今回はちょっと強い口調で、でれろん!
(255日目∞ 4月20日)
奥田亮 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。