ひょうたん楽器のデュオ「baubau」

by 丸黄うりほ

▲ビリンバウの渡辺亮さん(左)。ダンバウの冷水ひとみさん(右)。

 

京都を拠点に活動中の「baubau」は、ひょうたんルーツの民族楽器だけ、しかも一弦の楽器だけで組まれたデュオ。

この日記の110日目111日目112日目で紹介したように、世界の民族楽器には、ひょうたんで作られている楽器や、もともとはひょうたんで作られていた楽器が結構たくさんあるんです。とはいうものの、ひょうたん楽器だけのデュオはかなり珍しい。

「baubau」のメンバーは冷水ひとみさんと渡辺亮さん。

冷水ひとみさんは微分音の研究家。平均律ではない音律、とくに現代音楽の作曲家ハリー・パーチが提案した43音階をもとに調律した自作(!)微分音オルガンの使い手として、バイオリンとのデュオ「シジジーズ」や、山村浩二氏のアニメーションなど映画音楽の作曲家としても活躍中。

渡辺亮さんは、あらゆる打楽器を演奏できる超絶技巧パーカッショニストとして、数多くのレコーディング、コンサートに参加。また、画家・美術家でもあり、妖怪博士としても知られる人物なのです。

「baubau」で冷水さんが演奏するのは、ベトナムの楽器、ダンバウ。ダンバウは、竹でできた本体に弦が1本張られ、左端に竿と共鳴器としてのひょうたんがついていて、弦を竹のピックで弾いて音を出します。現在手に入るダンバウは、本体はたいてい木で、ひょうたんも飾りのような役目になっているようですが。単純な構造の楽器だけに演奏は難しく、弦が振動している間に右手で倍音を奏で、左手で音階を調節するのだそう。

渡辺亮さんが演奏するビリンバウは、ブラジルの楽器。弓形の長い棒にピアノ線を張り、半分に切ったひょうたんを弓につけて共鳴させ、細い棒で弦を叩いて演奏します。音程は石やコインを使って調節。この楽器はまた、カシシという、丸く切ったひょうたんを底に用い、籐で編んだ中に小石などを入れた楽器と一緒に演奏することも。どちらもブラジルの武術カポエイラで使われることでも有名です。

ふたつのひょうたん楽器、ダンバウとビリンバウ。そして、冷水さんと渡辺さんという稀有なセンスをもつ演奏家から生まれる音楽は、ちょっと他では聴いたことがないもの。民族楽器を使用しながらも、それは決して民族音楽ではありません。じゃあ何って聞かれるとどう答えたらいいのかな……。まだ名前のない音楽。

「baubau」は、昨日ここで紹介した奥田亮さんとともに、12月22日・京都 Zac Baran で開催される「年忘れ!歳末ひょうたんづくし」に出演が決まっています。