大分・ひょうたん祭り(3)ひょうたん様のご準備
by 丸黄うりほ
神社から降りて元の場所へ戻ると、ひょうたん仲間の中野さんが緑色の法被を着た世話役の男性から話を聞いていました。私も耳をすまして一緒に聞きました。それによると……。
ひょうたん祭りは、柴山八幡社の氏子である千歳町の柴山地区、高畑地区を11組に分けて順に持ち回りで行い、その年の当番の組から祭りを仕切る座元と、ひょうたん様が選ばれるのだそうです。
ひょうたん様になれるのは、当番の組でいちばん元気のいい長老の男性。大わらじをはいて歩ける体力があり、酒にも強くないとなりません。
祭りの準備は2日前から始まり、当番の組の人たちは大わらじや注連縄(しめなわ)を綯うなど大忙し。流鏑馬(やぶさめ)を行う清者は近くを流れる大野川の冷たい水で身を清め、そのほかの関係者は座元の家に泊まり込んで酒を飲む。当日、一行は宮守に移動してまたまた宴会。私が神社の隣家だと思っていたのは、宮守だったのだそうです。つまり、ひょうたん様になる人は2日間ずっと飲みっぱなしというわけですね。ばっちり酔っ払っているところに、大わらじをはいて町を練り歩く。そりゃ酒に強くないと務まりませんよね。
……お話を聞いている間に宴会も終わったようです。緋色の衣装をまとったひょうたん様が再び姿を現しました。
緑色の法被を着た世話役の人々がひょうたん様に大わらじをはかせます。わらじの大きさは縦1.2メートル、幅50センチ。重さは片足だけで約10キロもあるらしい。
もともとわらじは普通のサイズだったそうです。それが、祭り当番の組が前年の組のわらじに対抗してサイズを大きく作っているうちに、どんどん巨大化していったのだとか……。でも、これだけ大きくなってしまうともう一人では歩けません。
ひょうたん様は世話役に抱えられ、頭に長ひょうたんの被り物をつけてもらい、長太刀を背負い、紐のついた大ひょうたんを肩から斜めにつるして立ち上がりました。
さあ。いよいよ、ひょうたん様の練り歩きの準備が整いました!