ひょうたんの死について考える。
by 丸黄うりほ
我が家のひょうたんウェスパシアヌスは10月に入っても花が咲き、最後の実「ウェス実8号」を見事に結実させて、その生命の強靭さに驚かされていました。ひょうたんの実が成るのは6月から8月くらいが普通で、たまに9月でも成ることがあるのですが、10月に入って結実するというのは珍しいと思います。
そんな元気な老ひょうたんウェスパシアヌスも、10日ほど前にほとんどの葉が青枯れてしまうという悲しい出来事が起こりました。(詳しくは157日目の日記をお読みください)
私はその後も水やりだけは続けていたのですが、株が回復するようすはありません。先端だけわずかに残っていた緑色の葉もまた1枚、2枚と枯れてしまって、今はうどんこ病の白いカビに冒された小さな葉、たった3枚を残すのみになりました。
ウェス実8号につながっている蔓は、かろうじて緑色をとどめていますし、その蔓の股に小さな青い葉が、1枚だけですが出かかっている。そこだけ見ると、まだ生きているような感じがします。
ところが、土から直接出ているひょうたんの親蔓はもう緑色をしていません。完全に茶色くなっていて、植物らしい弾力がなくなり、筋だけのようになっています。そして、その蔓を軽く揺らすとぐらぐらします。もう根が土に張っていない。おそらく腐ってしまっています。
植物にとっての根は、人間にとっての頭だと思います。ここで生きるのに必要な司令を出し、栄養や水分を吸収する。つまり、ウェスパシアヌスは今や、人間でいうと脳死のような状態だと思われます。脳が死んでしまっても、しばらくの間ほかの臓器は動いているし、死体になっても髪や爪が伸びるというのを聞いたこともあります。
植物は切り花のように根から葉や花を切り離してしまっても、しばらくは元気であるように見えます。水に茎をつけておくといつのまにか根が伸びてきたりもします。植物の死は、人間のような動物の死とは根本的に違うのだと思います。
ひょうたんウェスパシアヌスは生きているのか、死んでいるのか。水やりはこのまま継続するべきなのか、もうしてもしなくても同じなのか。
難しい。ほんとうに難しいです。