ジョージアのワインひしゃく
by 丸黄うりほ
阪急塚口駅(兵庫県尼崎市)から徒歩10分くらいの場所に、ワインバー「ナジャ」というお店があります。今のように自然派ワインがポピュラーになる前からいち早くそれらの個性的なワインを紹介し提供していたということで、ワイン通には知られたお店。先日、ワインに詳しいお友達に連れられて、初めて行ってきました。
お店に入るのはこの日が初めてだったのですが、じつは店主でソムリエの米沢伸介さんとは知り合いでした。いや、知り合いというより私が勝手にファンでした。米沢さんは DJ でもあって、たびたびその選曲にうっとりさせられていました。夜を徹して行われるクラブイベントで、もうすぐ空が白み始める時間帯に、この世にありながら彼岸を感じさせるような音楽をかける人。
私はワインを飲むのは大好きですが、知識がないのでちょっと緊張していました。でも、誘っていただいて本当によかった。
ほとんど住宅街という微妙な立地にある「ナジャ」の店内では、ワインセラーに入りきらないほどのワインと、ジャンルレスでありながら米沢さんらしい渋いレコードが混ざり合うようにして山を作っていました。
そして、なんとカウンター上のワインの瓶にささっていたのは!
ひょうたん!ひょうたんではありませんか!
「あ、やはりひょうたんに反応しますね」と米沢さんは笑ってらっしゃいます。「やっぱりこれはひょうたんなんですね!なぜ、これがここに?」と興奮が抑えられない私。「これはジョージアのワインひしゃくです。ジョージアはワイン発祥の国なんですよ」。
ひょうたんを酒器にする文化は世界中にあって、特にアフリカ、アジアにはたくさんあります。たとえば韓国のマッコリに添えられるひしゃくは、鶴首(杓ひょうたん)をタテに二つ割りにして、丸い部分で酒を汲み、細い部分をスプーンのように手にもって使います。
このジョージアのワインひしゃくに使われているのも鶴首ひょうたんですが、細い部分をヨコに切って口を作り、そこから酒を汲んだり注いだりする仕組みです。手に持つのは丸い部分の一部を切って刺した竹。
ひょうたんを見つけた途端、私のなかの「よそいきの顔」みたいなものが良くも悪くもすっかり吹っ飛んでしまいました。それからいただいたワインが最高だったのはいうまでもありません。