3月2日|でれろん暮らし|その265「めんどくさいやつ」 by 奥田亮

なんだか根源的な問題に突き当たってしまいました

by 奥田亮

レコーディング風景。なんとも不思議です。(写真:金澤Bull壮一)

先週はお休みをいただきました。さて、その間にも引き続きレコーディングは継続中で、先週はすでに録音を終えた《ビビリンチョ》を、もう一度録音しなおしました。《ビビリンチョ》は、大きな長瓢でつくったインドのタンプーラのような楽器(詳しくは「その242」参照)です。

タンプーラはインド音楽で通奏低音を流す役割の楽器で、ジャワリと呼ばれる特殊なブリッジによって醸される倍音のうねりに脳みそが共振し、あっちの世界に陶酔してしまう「危ない」楽器です。この「危ない」陶酔感をなんとかひょうたんの自然な曲面で作れないかと、いろいろ改良を重ね、かなり近づいていはきているのですが、まだまだホンモノのタンプーラには及びもつきません。そりゃ繊細この上ない楽器ですから、難しいのはわかっているのですが。

そこで、レコーディングエンジニアの金澤Bull君と相談して、マイクを変えたり位置を調整したり、エフェクターで少し加工したりといろいろやってみています。《ビビリンチョ》のレコーディングは今回で3回目。毎回、いい感じにいけたかな、と思うのですが、何度も聴くうちに欲が出てきて、もっとこんな感じにできないか、などと妄想が立ち上がり、別の方法を試してみたりしています。今回はできるだけ外部のノイズが聞こえない環境の中で、複数のマイクを使って録ってみることに。しかもマイクに背を向けて後ろから。

録音を聴き、もう一度重ねたり、少しリバーブを入れたりと、さらにいろいろやってみました。いろいろ加工していくと割といい感じにはなってきたんですよ。でも、うーん。録音された音自体はいい感じなのですが、どうも何かしっくりきません。この違和感、《ビビリンチョ》という楽器自体の課題ではないかということがわかってきました。タンプーラのような陶酔感を目指すのなら、タンプーラでいいわけで、あえて《ビビリンチョ》という楽器を作ったのなら、相応の理由がいるでしょ。ということなんですね。

なんだか根源的な問題に突き当たってしまいました。なんというか、そこまで考えなくてもいいんですけどね。でも、そうじゃないと面白がれない自分がいることも確かです。自分が面白がれなかったら、こんなことやる意味ないですもんね。めんどくさいやつですね、儂(わし)も。でれろん。

(1426日目∞ 3月2日)

レコーディング風景。表向きでも録ってみました。(写真:金澤Bull壮一)

これまでの『でれろん暮らし』はこちら

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。