私はただ「そこに居た」という役で十分では
by 奥田亮

演奏風景。右から馮馳(Hyo ti)さん、川村浩司さん、奥田(撮影: 以下すべて中島敏子)
寒い日が続きます。積雪はたいしたことはありませんが、最高気温が氷点下ともなると、体が硬直してしまいます。もう2月、寒さはまだこれからかも。そんな中ですが、レコーディングだけは着々と進めております。
先週はあらたにお二人のゲストをお招きしました。お一人はアーティスト馮馳(Hyo ti)さん。でれろん暮らしその178でご紹介した美術家ですが、私の影響が多少あったのか、おならの音しかしないヘンテコな楽器を作ったという噂を聞き、これは絶対に面白いと確信して、どんな楽器なのかも確認せずにお誘いしました。
もうお一人は川村浩司さん。普段は料理人ですが、唯一無二の感性でノイズをつくる人。この方とも何度か一緒に遊んだことがあり、今回ぜひ参加してもらいたくてお声がけしたのでした。
当初はお一人ずつと共演しようと考えていたのですが、いっそ三人で即興演奏したら面白いのではないかと思いついたのでした。
馮さんの楽器は、出る音も見た目も想像以上にぶっ飛んでいました。ただ、これがおならの音? という感じだったので聞いてみると、持ってきたのはおならの音が出る楽器ではなくて新たに作った別の楽器だということ。レコーディングもいいけれど、いつかぜひライブパフォーマンスを披露してほしいと思いました。

馮さんの楽器〈ピーブー〉。ひょうたんではないがひょうたんっぽい。

馮さんの楽器〈ブーカン〉。でかい。
川村さんの出す音は、いつもながら美しくやさしい音で、人が操作している気配が少ないのに、しっかり存在感を発揮する絶妙なバランス。「ノイズ」という名前で呼ばれるこのジャンルの音は、楽器という明確な支持体がなく、音の波形と共鳴で作られる音なので、ある意味純粋な音といえます。彼の出す音を聴いていると、ノイズ=雑音と呼ぶのは少々乱暴だなと思うのでした。

川村浩司さん。演奏の時はなぜかキャップを被る。
当日は、前々回のレコーディングで歌を歌ってくれたささきりょうたさんがたまたま立ち寄ってくれ、さらにそこに妻の中島敏子さんも加わって背後で音を出してくれたので、もう自分が音を出す必要を感じなくなり、私はただ「そこに居た」という役で十分ではと思ったのでした。
とはいえ、今回制作するアルバム全体のことを考えると、ただ録音した音を並べるだけではあんまり芸がないし、何らかの方向性をもって構成しないといけないなとも思うのでした。
今週もまたレコーディングを予定しています。なんだか横道にばかり外れてしまい、なかなか固まってこないのですが、エンジニアリングをしてくれているBULLさんも、じっくりお付き合いしてくださりそうなので、ゆっくり取り組みたいと思います。でれろん。

エンジニアリングのBULLさんと。なんか真剣にやってる感がありますねえ。
(1416日目∞ 2月2日)
- 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。



