じつは以前から作ってみようと思っていた楽器があった

by 奥田亮

先々週収穫したひょうたんは、そのまま物置の片隅に放置したまま。何にしようかと考えながらぼんやり眺めたりしていますが、なかなかこれ、というものが思いつきません。形は悪くないし、そこそこ大きいし、分厚くてしっかりしているので、きっといい楽器になるだろうとは思うのですが、このひょうたんに見合う楽器が思いつかないのです。

じつは以前から作ってみようと思っていた楽器が一つあったのですが、今回収穫したりっぱなひょうたんで作るのは少々もったいないというか、もっとささやかなものにしたかったのです。そこで、在庫で残っているひょうたんを使って作ってみることにしました。

その楽器は、ずいぶん以前に思いついて試作していた、プラスチックの櫛(くし)にひょうたんをくっつけただけのもの。櫛の歯をピロピロと指ではじいた音が、ひょうたんに共鳴して鳴るというシンプルな楽器でした。このとき使っていた櫛は、東横インに泊まった時にもらってきた使い捨ての櫛。これがなかなかいい音がしたので、気をよくして櫛の歯を短く切って音程を変えてみたりと、いろいろ実験して楽しんでいたのです。仮に櫛ひょうたんと名付けておきます。

かつて試作した櫛ひょうたん。うろ覚えにつきディテール不詳。

よし、これをもっと本格的に作ろうと思って、使っていたその櫛を処分し、また東横インに泊まった時に新しくもらってきたのですが、あれれ、櫛の素材が変わっています。前は硬いプラだったのに今回はやわらかいプラ。はじいてもピロピロといい音がしません。その後何度かビジネスホテルに泊まる機会があったので、その度に櫛(の素材と音)をチェックしていたのですが、あの硬いプラの櫛に出会うことはありませんでした。

そんなことがあってこの新楽器の制作は実現しないまま長い年月がたち、すっかり忘れていました。ところが、昨年ひょうたん製レインスティック《無病雨乞杖》を作った折に、ひょうたんの内側に串をたくさん差しこむという作業をしていて、そのプロセス中、ひょうたんの表面に飛び出た串を見て、この楽器のことを思い出したのでした。

制作途中の《無病雨乞杖》。ハリネズミのようである。

ああ、もしかしたら櫛ではなくて串を使ったらいいかもしれない。飛び出た串を指ではじいてみると、そこそこいい音がしそうな雰囲気。これはいけるかも、と思いながら、気づけばまた一年。再び思い出し、やっとのこと作ってみようという気持ちになったのでした。前置きが長くなりましたが、今回作ったのがこれです。

串ひょうたん。今のところ失敗作か。

で、肝心の音ですが、あまりよろしくありません。きっと串が太すぎたり穴の大きさが小さすぎたり、何かのバランスがよくないのだと思います。ちゃんと完成した新楽器としてご紹介したかったのですが、力不足、知識不足にてまた持ち越しです。でれろん。