さあ、いよいよもう一度弦を張ってみましょう。
by 奥田亮

針金をグルグル巻きにし、竹のジャワリ(ブリッジ)をつけてみました。
楽器《ビビリンチョ》のメンテ(改良? 改造?)レポートの続きです。2週間前の前回のご報告では、共鳴板の凹み、亀裂をなんとか修復したところまでだったと思います。さあ、いよいよもう一度弦を張ってみましょう。調弦は元の状態と同様に、DとA。低い方のDはシタール弦の22番という弦。高い方のAは24番。糸巻きを締めていくと、ブチンッ。あれれ、どういうわけか切れてしまいます。前と同じなのになんでだろう。銅弦は切れやすいし、もしかしたら急な力に弱いのか。幸い弦は50mのロールになっていて何度か使えるので、もう一度必要な長さに切り出し、今度はゆっくり少しずつ巻いて張力を強めていきました。それでも怖いので、低い方は1音低いCまで上げて念のために様子見。高い方も急にAまで上げずに、とりあえず1音低いGまで、とゆっくり巻いていったのですが、ブチンッ。あれれ、また途中で切れてしまいました。
うぬぬ〜、弦が切れるのは心臓に悪いっす。もしかしたら他に原因があるのかも。ああ、そうだ。糸巻きの手前のお花型の弦留めに、弦を通す穴をあけたのですが、その穴に金属製のワッシャーを接着していたのです。これは弦留めが木製のため、弦が食い込んでしまうのを防ぐための処置だったのですが、これが返って災いして弦を切ってしまったのかもしれません。せっかく付けたワッシャーを外してもう一度弦を張り替えました。ロールとはいえ、弦もそんなにお安くないので、なるべく切れないでほしい。ゆっくりゆっくり弦の張力を上げていき、念のため低いところで様子見。一晩寝かせてもう少し上げて、と慎重に弦を巻いていきました。その甲斐あってDとAの2弦はなんとか張ることができ、音もいい感じにビヨンビヨン倍音を響かせてくれます。
さて、次は残りの2弦。元来、この2弦の音がよくなかったので始めたメンテだったので、この2弦の鳴りが良くなかったら元も子もありません。予定ではオクターブ上のDとAにしたいのですが、弦の様子から考えて、今の22番と24番では、そこまで弦を張るのは難しそうです。またブチンッと切れてしまいます。調べると27番という弦があるようで、それならいけそうな気がするのですが、いつも購入しているネットショップでは長らく品切れ中。いずれにせよ、音を高くするには、弦を、強く張るか、細くするか、短くするかの3択です。
現状では強く張る方法も、細くする方法も絶たれ、残るは短くする方法しかありません。それは、ギターで言うところのカポタスト(いわゆるカポ)をつけるか、あるいはブリッジをつけるという方法です。つまり、弦の長さを短くするために、カポで上から押さえ込むか、ブリッジで下から持ち上げるか、どちらかです。結論からいうと、いろいろ試してみて、今回の場合はカポ方式の方が良さそうでした。
まず、3弦目をオクターブ高いDに合わせるべく、細めの24番を張り、試みに上の方から針金をグルグル巻きにして音を上げました。弦が短くなるので当然高い音がします。また、弦高が低くなるので、弦と共鳴板の接地面が多くなり、結果として倍音の伸びがよくなったようにも思います。メンテ前に比べると倍音の響きは格段によくなりました。気をよくして4弦目。叶うことなら、オクターブ高いAにしたいのですが、細い28番が手に入らないので、諦めて2弦と同じ低いAにしてみることにしました。チューニングは2弦と同じなので、張力的には問題ないはずですが、張ってみるとどうもビヨンビヨンの鳴り方がよくありません。やはり共鳴板と弦の接地面の形が良くないのだと思われます。長瓢の天然自然の形をそのまま使っているので仕方ありません。これを改善するには、ひょうたんの形そのものを変えないといけなくなります。そうもいかないので、3弦と同じようにカポ方式にしてみることにしました。少し緩めに弦を張り、針金でぎゅっと絞ります。これで弦高が低くなり、共鳴板と弦の接地の仕方が変わります。

全体的にはいい感じですかね。
結果はまずまず。いい感じに倍音が伸びます。オクターブ高くするのは諦めましたが、結果的に同じ音にした結果、弦同士が響き合い、さらに複雑な倍音を奏でるようになりました。カポは試みに針金でグルグル巻きにしただけなので、カッコよくありません。このカポに代わる方法はすでに考えてはいますが、当面はこのまましばらくは楽しめそうです。とりあえず、今回のメンテはこれで一旦終了です。でれろん。
(1347日目∞ 7月28日)